卒業
二週間近く寝ている間に、周囲の状況はいろいろと変わってきていた。
三年生の卒業が間近に迫っていたのである。それに向けて、自然科学部内でも
と言っても、単純な卒業パーティーだがな。
「いろいろあったけど、ホントに楽しかったな……」
志望校に合格を決めた代田真登美が校舎の外から部室を見て、そんなことを呟く。
隣には、同じ高校にやはり合格した玖島楓恋が寄り添うように立ち、
「ホントだね」
と相槌を打つ。
授業はないが、合格の報告の為に登校したのだ。
三年間の思い出に浸りながら、部室へと足を進める。
すると、窓から外を見ていて二人に気付いた月城こよみが、
「せんぱ~い!」
声を掛けてきた。
手を振りながら笑顔で応える代田真登美と玖島楓恋の様子に、受験が上手くいったことを察し、
「お~っ!」
と部室内で歓声が上がった。
幽霊部員となった
「おめでとうございます!」
二人を部室に迎え、部員を代表して月城こよみが言うと、
「ありがとう。みんなのおかげだよ」
代田真登美が満面の笑みで応えた。
パーティーの本番は卒業式の後だが、合格を祝ってジュースと菓子が用意されていた。
そんなあたたかい
私は当然、そんな奴らの様子を淡々と眺めていたのだが、
『まあ、たまにはこういうのも悪くはないのかもしれん……』
などと考えていたりもしていたのだった。
だが…そうだな……
私としては正直、苦笑いを浮かべずにはいられないな。
こんな平和で穏やかで、いかにもな<青春の一ページ>など、私には似つかわしくない。
それを示すかのようにこの時すでに状況が動き始めていたのだが、それはまあもう少し後に触れることにしよう。
それよりも、このところ私がやけに人間と馴れ合っているようにも見えてしまっていることは、いささか不本意ではある。
これは私の<本質>ではない。
故にこれからしばらく、本来の<私らしい私>について触れていくことにしよう。
おそらく人間は、そんな私の姿を見て呪いの言葉を吐き、唾棄するだろう。
しかしそれこそが<私>なのだ。
これは、今よりざっと百億年後の私についての話である。
<理不尽>で<不条理>で<不可解>で、<恐怖と憎悪の対象>そのものとしての私を、とくと見るがいい。
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