第19話 勇者の力と異世界のお話

王国軍三十万の兵士がルシファーの力によって一掃され、その力は王国ギリギリ到達していないものの、魔王城目の前に巨大なクレーターが出来上がってしまった。


俺は、そのクレーターを部下と相談の結果、新たな拠点をつくる事にした。


「さぁて、じゃあ勇者は後回しにして、拠点の建築と行くか!」

「で?どうするんだ?魔王の部下の中には、建築スキルなんて持っている奴は一人も居ねえぞ?」

「そう、だったな......と言っても建築と言ったら何だ?俺は召喚するにあたって、生物なら何でも大丈夫だが」

「何ならドワーフってのはどうだ?筋肉質で武器の精錬には最高って話を聞いた事があるが......」

「ほほー、なんかイメージ湧かねぇけどやってみるか」


俺は、『筋肉質で建築が得意な奴』と言う事をイメージし、召喚を開始した。


『あらゆる物を作り、国に繁栄をもたらす者よ、今此処に現れん!』


すると召喚されたのは、緑十字の黄色いヘルメットを被り、白いタンクトップ、作業ズボンを履いた、おっさんの様なドワーフが召喚された。


召喚された魔族?は、目を覚ますと最初に欠伸をし、ハッと気づく様に当たりを見回す。


「どこだ?ここ......。ん?俺......自分の家に居たよな?あれ?何で作業服着てんだ??」


ん?反応的に魔族では無い?これはまた新しいケースの召喚だ。まさかだとは思うが......人間じゃ無いよな?とりあえず話しかけてみよう。


「おっす!俺は魔王だ。お前は......」

「あ?魔王?ん〜?俺頭でも打っちまったか?でも寝てたらありえねぇよな?」

「いいや、此処は現実だ。目を覚ませ」

「お、おう......あぁ、俺の名前は山田武だ。此処はどこなんだ?」


ヤマダ・タケシ?なんか硬そうな名前だな......それと名前のセンスねぇなぁ。


「此処は魔王城。個性的な部下が集まる場所だ」

「魔王城って事は城か!?ったくどうなってんだ?これは夢か?なんで俺外国にすっ飛ばされてんだよ......」

「さっきからお前こそ何言ってんだ?外国ってなんだ?」

「は?外国は外国だろ。アメリカとか、ロシアとか......」


駄目だコイツと話していると頭が爆発しそうだ。ガイコクなんて言葉聞いた事ねぇぞ?


そこで、一人のゴブリンが俺に話し掛けて来た。


「まさかその方は、人間ですが、異世界の人間なのでは?」

「異世界?なんかまたぶっ飛んだ話になって来たな......」

「えぇ、異世界の確かアースと呼ばれる星に住む生物が居ましてね、さっきからこの方が言う言葉が、何かと村と交易中にあった古文書の言葉と一致しているんですよね」

「あ?古文書?何の話だ」

「いえ、何となーく村の書物を暇なので漁り読んでたんですよ」


なるほど。その本にアースって星の事が書かれて居たんだな。って事はこれは今どう言う状況なんだ?


「つまり、魔王様の召喚によってこの方は次元を超えて此処にすっ飛んで来たかと......」


えぇ......俺の召喚能力どうなってんだよ......。まさか、ルシファーの召喚にもこれが関係しているのか?


「さっきら何の話をしているんだ?俺は何故此処にいる?」

「あぁ、そうだったな。お前が此処に来たのは一つ理由があるんだ。ここにあるクレーター見えるだろ?」

「お、おぉ......こりゃまた、爆発事故でもあったのか?」

「ちょっとな......で、俺は此処に新たな拠点を作ろうと思う!それをお前に頼む!」

「はぁ!?まさか......一人で作れってのか?」

「何でも作れるんだろ?」

「いや、まぁ、大体の物は作れるが、建物になると一人じゃぁ無理だ!」


一人じゃ無理って事は仲間が必要なのか?なんだ......人間だっけか?意外と性能低いんだな。いや、俺らが異常なのか?


「そうだな......何ならフロガを建設仲間として入れてやろう!フロガは細かい事は嫌いだが積み木は得意だからな!」

「いや!もう一人でやります!積み木感覚で建設なんてやって貰っちゃあこっちが困る」

「良いのか?その様子だと何年掛かろうが決心はついた感じだな......となると、完成した頃には世界征服出来るてるかもな!」

「世界征服?あぁ、魔王だからか」


そうして、何も無い土地に武は、建設は始めた。


そう言えば、武の住む世界ってどんな感じ何だ?自分の部屋やら、外国やら言って、住み慣れている感じだったが......。


「そう言えば、アースだっけ?その世界はどんな感じなんだ?」

「なんだ?世界征服って言ってる奴が、こっちの世界に興味を持ち始めたか?」

「何だ?悪いのか?」

「いや?まぁ、そうだな......こっちの世界がどんな所か知らねえけど、世界征服しようってんなら辞めた方が良いぜ?こっちはそう言う事は、立派な『犯罪』として取り締まられるからな」


犯罪......罪って事か?面倒そうな世界だなぁ......この世界では、生きたいなら殺る、生き延びたいなら殺る。いつ自分が死ぬか分からねえ世界だからな......。


「そして、特徴と言えば、でかい建物がいくつも建ち並び、でかい陸として別れている所あるが、全て橋で繋がれ、それが一つの国にとして成り立っているんだ!」


武は俺に向かってキラキラとした目で自分の住む世界の事を語っていた。


「高層の建物が建ち並ぶ国ねぇ......この世界じゃ王国しかありえねえかなぁ......よし、この話はまた今度にするか。完成を楽しみにしてるぜ?」

「おう!気長に待ってろ」


そうして、俺は、部下とこれからの事を話す事にした。


一方、王国


王国は、魔王討伐作戦にて三十万の兵士、王国内の全兵士が全滅した事によって、壊滅状態になっていた。


唯一残った勇者は、魔王を恨み、何の役に立てなかった自分を恨む。


「全員やられちまった......残るは俺と王様。俺にもっと力があれば......過去に魔王を倒した勇者ってのは、一体どうやって倒したんだ?」

「うむぅ......勇者よ、この件は本当に済まなかった」

「はっ、思った通りだ......魔王は一筋縄では無理だと」

「勇者よ、先程、『もっと力があれば』と言っていたな?ならば今は居ない勇者の家を教えよう。何かヒントを得られるかも知れん。盗賊に荒らされない様にずっと封鎖していたのだ」

「分かった。魔王がどんな奴か分かった以上、もうふざけてはいられない。過去の勇者の家に行ってくる」


旧勇者の家に行くと、そこは普通の木で出来た小さな小屋だった。


「ここが勇者の家?王宮関係者では無かったのか?」


小屋に入ると、封鎖されていたとは言え、老朽化が進んでいて、床が今にも抜け落ちそうな音が鳴る。


しかし、旧勇者が残して行ったとされる日記や本、服等は綺麗に残っていた。


「これか......良し、読んでみるか」


勇者は、日記をベッドに座って読んだ。


『一日目

俺は今日、何故か勇者に選ばれた。力も知識も無い俺が何故選ばれたのだろう。


訳も分からず家に帰って来た訳だが、俺はここにこれからの事を日記として残す事にする。まぁ、俺が死んだら誰か読んでくれるでしょ。


さて、今日書く事は特に無い。まだ何も起こっていないしな』


一日目は、何となく日記残す事について書いてあった。この勇者も、訳の分からん理由で選ばれたんだなぁ......。


勇者は、ページを飛ばし気になる所を読んでいった。


『七日目

魔王が現れてから六日が経った。俺の事を選んだ王国が俺を城に呼んだが、俺は拒否した。こんなに面倒な事なら先に説明してくれ。


俺は、他人の力を借りるのは嫌いなんだ。個人でやらせて貰おう。


家に王国から荷物が届いた。品名は、勇者の腕輪?今まで勇者は俺が初めてと言うのに、何故こんな物が?


荷物の中に一緒に手紙が入っていた。手紙の内容は『その腕輪に力込めるとめっちゃ強くなる』


またしても訳が分からん。俺はその手紙を燃やして捨てた』


おいおい。勇者の腕輪ってそんな感じに作られた物なのかよ......伝説の話とか期待していたのに......。


『八日目

王国から勇者の腕輪が届いたので仕方なく俺は、返品しに王国へ持っていった。


しかし、返品しようにも国王に引き返され、山とか島とか行けば分かるとだけ言われて、家に帰って来た。ったく勇者の扱いどうなってんだ?』


王様ぁ!あんたのせいで大事なヒントが分かんねえじゃねぇか!まぁ、ここに書いてある王様ももう生きてねえけど。


そして勇者は、日記を読んで行くと曖昧だが、三つの山と一つの島の地下に神殿があると言う事が分かった。


「さぁて、ここに行けば勇者の力を取り戻せるんだな」


こうして勇者は、魔王を倒すために勇者の力を手に入れる為に、その場所へと向かった。

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