第2話;悪役令嬢の覚醒

幸せだった時の話


ーーーーーーーーーーー


「茜(あかね)、25歳の誕生日おめでとう」

「ママおたんじょうびおめでとう、だいちゅき」

「ありがとう、真(まこと)、茉莉(まり)」


小さい体をくっつけて頬にキスをくれた最愛の2歳の娘と

手を握って優しく微笑んでくれる夫


小さい箱のリボンを取り中からケースを出し開けると中からルビーの指輪が入っていた。

指にはルビーの指輪、首には折り紙で作ったメダル、幸せをかみしめていた。


「とうとう明後日か、本当に引退するのか?」

「万年2位脱却!明後日こそは絶対優勝目指すぞ、負けても勝っても明後日で引退、真や茉莉には不自由かけたね」

「そんなことは無いよ、応援楽しかったよ」


中学から続けてきた剣道

インターハイにも行った、国体にも行った地区の大会では優勝するが

全国大会はいつも2位か3位だった。


「来週からボクシングジムのインストラクター

メインの剣道ではなく産後のダイエットで始めたキックボクシンクが仕事になるとは思わなかったけどね」



<しかし   そんな日は来なかった>



次の日、大通りに面したコンビニにお菓子やジュースを買いに来た


「先、外行ってるね」

「ああ」


会計をしている茜の旦那、

茉莉を乗せたチャイルドカーを押して外に出た

前を5歳くらいの女の子が歩いている、母親であろう女性は右の方で友達らしき人と喋っている

それは目の前にいきなり来た


キキーガガガ!!


こちらに向かって走る大型のトラック

女の子と娘が目に入る、時間がゆっくりになった気がした、


「アスリートの火事場の馬鹿力なめんなよ!」


女の子をさっと抱えると、先を歩いていた大学生らしき男の子に向かって投げた、

そして娘のチャイルドカーをその横のおじさんに向かって押した


トラックが茜にぶつかっていく、にぶい痛みが全身に走った


茜は見た、大学生が抱える女の子を、チャイルドカーを支えるおじさんの姿を


「あかねー!!」


叫ぶ旦那と


「うわーん!!」


泣く娘の声を


世界は消えた


<暗転>





「うっ」


フィオナはゆっくりと」目を開けた


「・・・・・・・」


回りを覆っていたドームがぶわっと大きくなったなと思ったらふっと消えた

ごろんと岩の上に大の字に転がった


雨はやみ満天の星空と双子月が見える


「最悪」


そうつぶやくと無くなった左手を見る


「転生?ふざけるなよ記憶が戻るのが今って最悪だろ!」


声はフィオナなのに言葉使いはどう見ても茜になっている


「ふっははっはははは!」


笑いが止まらない、涙が流れてくる


「幸せだった茜は幸せだった、なのに今は何だこの状態は何なんだよ!」


どれくらい泣いただろうか?本人は1時間にも感じた


「綺麗だな・・・」


満天の星空を眺めフィオナは泣くのをやめた


「んーなんかどうでも良くなった・・・これからのこと考えようっと」


昔から開き直るのが早い茜、もともとポジティブで前向きな性格であった。


「さて状況を整理、んー良くある悪役令嬢物の世界?

悪役はどう見てもヒロインの方だけどね・・・」


無くなった手を眺めて


「おかしいよねこの大けがが数時間でふさがって、

背中につっぱった感じはあるけど全然痛くない、

腕も薄い皮膚が覆っているし違和感はあるけど痛くない、治ってる

普通死んでるよね出血多量で、

この怪我であれだけ走るってありえないわ・・・

転生ものの小説、結構読んでたけど大体チートだったよね、

なんかそれっぽいなぁ・・・

そうだ気絶するときなんか見えた」



「ステータス・・・・


目の前に一枚の紙みたいな物が現れた


オープンなんちゃ・・・て」




さらに言葉を続けると

紙のようなものにかぶり大きなテレビ画面のような物が現れた。

がばって起きると画面も一緒に動いた


「・・・出たわ・・・今度はゲーム・・・もろRPGゲームのステータス画面じゃん」

「ゲーム時間も出てる・・・18年80日2:32って生まれた時からゲーム始めてるじゃん・・・」


はー

とため息をついたフィオナ、持ち物の欄に気になるものが目に付いた


【父からの手紙】

【公爵令嬢からの手紙】

【修道院への紹介状】


「え?何処に」


渡された皮袋を思い出し胸元を探った

これは確かに父がくれたものだ、最後に会いに来た父が


「隠しておきなさい」


と渡された物だ、お金やちょっとした身の回りの物の入った袋は辻馬車に置いてきていた。

持ち出す暇も無かった


皮袋は密閉がちゃんんとなされていて中まで濡れていないようだった

開くと、金貨と手紙が入っていた。


≪フィオナへ

お前の無実を証明してやれなくて申し訳なかった、

だがまだ私は諦めていない時間がかかるかも知れないが必ず証明してみせる、

それまでどうか無事でいてほしい、

修道院の紹介状を渡しておく、早まった真似は絶対にしないでくれ

父より≫


(お父様・・・信じてくれてたんだ・・・

相変わらずのポーカーフェイス!分かりにくいわ!

見捨てられたと思ったじゃない)


≪フィオナへ様へ

言い訳になってしましますが、

何度もあなたの無実の証言をすると父に言ったのですが

取り合ってもらえませんでした。

刺客が私に放たれているらしく家から出してもらえません

どうにか刺客の目をくぐりクランドール伯爵と連絡が付き

あなたの無実を言うことが出来ました。

クランドール伯爵とともにあなたの無実の証明を必ずします。

どうか無事でいてください。

マリアンヌ・フォン・バーンイニッシュ 公爵家令嬢≫


「ミッシェル・ブラウニ男爵令嬢って本当に何者?

刺客って・・・他に黒幕がいそうね・・・

マリアンヌさんが無事でよかった

裁判に来てくれなかったのはそういう訳か~

本人の意思ではないと思いたかった

そうかやっぱりか~

本当に見捨てられて無くてよかった」


他のステータスを見てため息のフィオナ


「しかしやっぱりチートだわすさまじくチート・・・

何?レベルの後ろの上限表示8(はち)じゃない∞(無限大)

って何よ!魔力の数字兆って0を並べるのやめたんかい!・・ん?」


(あれ?これって全部日本語・・・・)


「みんなこれが見えるのなら読めないんじゃない?

それともそれぞれ言語が違う?

でもステータス画面の話って聞いたことないなぁ

転生者専用?」


「あっページめくれる、キャラクターの全体映像が乗ってたりするんだよね。指でやればいいのかな?」


もともと茜は左利きだった手のない腕を上げていた・・・


「・・・・右利きよねフィオナは・・・」


指で横にスライドさせると次のページが現れた


「うわっリアルな全体映像・・・ボロボロの平民服、あれ?髪が白い・・・目が赤い・・・」


改めて自分の髪を見た


「白い・・・」


黒かった髪は真っ白に、金色だった目は赤色に


「・・・あれ?ヘルプがある、

その下に

<よくある質問>と

<自我機能付きヘルプ>

まじゲーム・・・

でも<自我機能付きヘルプ>?

なにそれ、光って主張してるし・・・」


押してみた


【A】:やっと呼んでいただけました。初めましてフィオナ様、何なりとお聞きください


女性の声が頭の中に響いた


(う~そう来たか)


「えっと・・・髪の毛と目の色が変わった原因解る?」


【A】:はい、髪は恐怖と大量の魔力の消費によるものです。

一時的なもので伸びてくる髪は黒になります。

目は元々赤かったのですが魔力封じのせいで赤が抑えられ金色になっておりました。

解放されたので赤に戻っております。


「魔封じ?」


【A】:腕輪です。腕を切らないと取れない程強力なものです。

かなり力のある魔女の物ですね。


「そうよ、小さい時から魔力が無いって言われてたのに・・・封じられていた?なぜ?

そう言えば定期的に屋敷に来る魔法使いが居たなぁ・・・あれか・・・」


【A】:黒髪で赤い目だったからです。


「もしかして黒魔女の呪い?昔話、迷信じゃないの?」


【A】:黒い髪や赤い目ものは多くいますが

二つそろったものは今までいませんでした。

クランドール伯爵家はもともと黒魔女の家系で

言い伝えでこの二つがそろったものが生まれたら

魔力を封印せよと言われていたようです。


「黒魔女伝説か・・・

あれって今思うと男に裏切られヒステリー起こした強力な魔力の持ち主が

逆恨みで町を焼き尽くしたって、はた迷惑な話よね

死ぬ際まで恨み言を言ってさ、てめぇには落ち度はなかったんかいって突っ込みたいわ!」


【A】:・・・そうですね・・・口悪いですね・・・亡くなって魂だけになった彼女は我に返ったようで恨みをなくしてほかの世界に行ってしまわれました。


「魔女の生まれ変わりみたいに思われたってことか・・・」


【A】:そうですね、見た目は実際は単なる先祖帰りです。


「でもこのチートステータスは何?」


【A】:魔封じの反動です。もともと女神族はとても優秀なのですが


「ちょっと待て!女神族?・・・ステータスにある・・・人間じゃないの私!」


【A】:女神族は数百年に一人しか現れません、かの黒魔女も女神族でした。

女神の見習いみたいなものです。

いずれは女神になります。

この世界のキーワードでもあります、先の女神をこの世界の住人は裏切りました、それにより国が滅びかけたのです。

今回も実は危なかったのです。


「え?なんかとんでもないものに転生した?私・・・

危なかった?でもまだ私何もしてないよ」


【A】:そう全て封印されて居たのです、強力な魔力を

魔封じにより逃げ場のなかった魔力はどんどん蓄積されていきました。

暴発を避けるように魔力上限をどんどん無意識にあげて行かれたのです。

しかしレベルの低い状態では限度があります

もう少しで暴発するところでした。


「・・・えっと暴発していたらどうなった?」


【A】:王都を中心に半径100キロ圏内はクレーターになっていたでしょう、あなた以外はすべて消えていました。


「えっとミッシェル・ブラウニ男爵令嬢に逆に感謝しなきゃいけないのかな?」


【A】:感謝は必要無いと思います。悪運の強さに敬服します


「あーそっちになるか・・・彼女も消えてたかも知れないんだもんね、ふ~ありがと状況がみえきたよ」


【A】:おそれいります。えっと2つお願いがあります


「え?お願い?さすが自我付きヘルプ・・なに?あたしにできること?」


【A】:はい、いずれは体を作っていただきたく、夢なんです、

今まで私を利用してくれる方が居なくて数万年寂しかった

出来たら人の姿で、それと名前をいただけませんか?


「・・・数万年ヘルプやってんだ、なぜ?利用されなかったの?」


【A】:ステータス事態認識されていなくて、たまたま偶然に開いても文字が読めなくて利用されませんでした。


「やっぱり読めないんだ・・・いやでも体を作るって・・・」


ステータス画面をよく見ると

【光魔法】

<回復魔法:SSS><人体欠損部生成:SSS><生物生成:レベル不足>


「人体欠損部生成!これなに?」


【A】:フィオナ様の左手再生できます。生物生成はレベル100で使用可能になります。


「うそやった~どうやるんだろ、魔法ならよく皆、詠唱してるよね」


【A】:実際は魔法はイメージです。

詠唱はイメージの乏しい物が手っ取り早く魔法を使う手段です。

イメージ豊かなフィオナ様には必要無いと思います


「イメージね、でもちょっと叫んでみるか」


{左手!元に戻れ!}


魔力が減っていく(しゅるしゅるしゅる)て音はしないがそんなイメージで骨・筋肉・皮膚と生成されて行って手が元に戻った、ものの2秒ほどだった

にぎにぎと左手を動かす


「再生の仕方きもっ!

手だ~よかったあ~でもめっちゃ、つるつるお肌」


【A】:生まれたてですので


「赤ちゃん肌ってことか・・・それと名前か~」


空を眺めた、うっすらと空は明るくなってきている川岸の崖の向こうに沈みかけた双子月


「ルナ、今からルナね」


【ルナ】:・・・はい!ありがとうございます・・・


感極まった感じがした







ステータス


名前:フィオナ・フォン・クランドール『田中 茜』

種族:女神族

年齢:18歳

称号:転生者、貶められた者、


【レベル: 61/∞ 】

【体力: 610000/610000 】

【魔力: 12兆/12兆 】億以下省略

【速さ: 680m/1秒】

【知力レベル: 200/∞】


【光魔法:∞】

【聖魔法:∞】

【闇魔法:∞】

【火炎魔法:∞】

【氷魔法:∞】

【水魔法:∞】

【風魔法:∞】

【土魔法:∞】

【雷魔法:∞】

【空間魔法:∞】

【重力魔法:∞】

【精神魔法:∞】

【解析魔法:∞】


スキル:∞

・望むもの全て可能






「チート過ぎ、速度マッハ2くらい?

おかしいでしょその速度

それに比べ、スキル、手抜き感丸出し・・・」


【ルナ】:世界征服は余裕で出来ますよ


「しないし、めんどくさい!」


【ルナ】:ミッシェル・ブラウニ男爵令嬢に復讐は?


「それもどうでもいいや、身の潔白はお父様・・・

おやじさんがしてくれるだろうし、

あの国は荒れるよ、

クランドール伯爵は国の中枢を担っていたからね

私の件で中枢から離れたし、

補助してた私が居なくなった時点で

国は回っていかないと思うよ。

政権争いが起こり、そこに付け込んで

攻めようとする国が出てくるだろうしね

あっ!ミッシェル・ブラウニ男爵令嬢って他国の間者とか」


【ルナ】:それは無いです

単に最高権力者になりたいだけの様に見受けられました。

それとフィオナ様が大嫌いみたいです。

その欲望を利用している誰かがいるようです

誰かはわかりません

フィオナ様に関係することでないと解らないので

直接は関係ない人物、

お会いしたこともないです。


「ちなみに他の人のレベルってはどんなものなの?」



一般的な人間のステータス(知力以外)


名前:ジャク

種族:人間

年齢:34歳

称号:堕落冒険者Cランク


【レベル: 25/50 】

【体力: 5000/5000 】

【魔力: 400/400 】

【速さ: 10m/1秒 】

【知力レベル: 8/50 】


【闇魔法:2】

【火炎魔法:3】

【水魔法:2】


スキル:2/2

・魔物感知:弱

・物理耐性:中


【ルナ】:殆どの人間のレベルは50が最大です

例外がたまに出ますが



人類最高


名前:エレオノール・フォン・クランドール

種族:人間

年齢:50歳

称号:ドラゴンスレイヤー・フィオナを溺愛


【レベル: 80/80 】

【体力: 800000/800000 】

【魔力: 100000/100000 】

【速さ: 50m/1秒 】

【知力レベル: 80/80 】


【光魔法:10MAX】

【聖魔法:10MAX】

【闇魔法:10MAX】

【火炎魔法:10MAX】

【氷魔法:10MAX】

【水魔法:10MAX】

【風魔法:10MAX】

【土魔法:10MAX】

【雷魔法:10MAX】

【空間魔法:10MAX】

【重力魔法:10MAX】

【精神魔法:10MAX】

【解析魔法:10MAX】


スキル:5/5

・自動異常回復:高

・精神汚染無効:高

・縮地:高

・会心の一撃:高

・体力上昇:高




「えーおやじさんすごい!

30年前の1年戦争の時大活躍したって聞いてたけど

人類最高だったんだ・・・

フィオナを溺愛ってそんなそぶり見たことないんだけど」


【ルナ】:貴方の前ではクールを装ってましたが、結構ふにゃふにゃでしたよ。

ちなみに世界最高は、フィオナ様です。

2番目が魔族の王の魔王です、強さはフィオナ様に関係しないと詳しくは解りません


「うえっ、ふにゃふにゃって訳が分からない人・・・魔王か・・・やっぱ居るんだ、まー魔族の国は星の裏側だし関係ないっと」


日が昇ってきた快晴の空


「太陽がまぶしい、さて行きましょうか新たな人生、世界征服と魔王退治はしないからね」


【ルナ】:しても面白いと思いますよ・・・どちらも


「面白いって・・・しないから、目指すは平穏まったり人生!」


ルナ:無理だと思いますが・・・





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