悪役令嬢は終わりから始まる~記憶戻るの遅いよ~
朋 美緒(とも みお)
第1話;悪役令嬢は地を這う
残酷な描写が続きます。
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フィオナは雨の中、恐怖に顔を強張らせながら左腕を抱えるように魔物の巣くう[迷いの森]を走っていた。
『背中が熱い、腕が熱い』
背中に大きな切り傷、切り落とされて無くなった左手を巻いているショールは血で真っ赤になっている。
「こっちだ!」
近くで男の声がする。
『怖い怖い、死にたくない!』
無我夢中で走る彼女の顔や腕、足は枝や草により切り傷擦り傷だらけである。
本当なら気絶してもおかしくない大けがであるにも関わらず、それでも足は止まらない。
<フィンドラス王国>
フィオナ・フォン・クランドール元伯爵令嬢、王太子の元婚約者である。
学園に転入してきたミッシェル・ブラウニ男爵令嬢に心奪われた王太子が
彼女のの策略に引っ掛かり、濡れ衣でフィオナを貶めたのである。
殺人未遂で投獄され家督を守るためクランドール伯爵家から排斥され、
婚約も破棄されたフィオナへの判決は国外追放、
わずかながらのお金を渡され国境を超えたすぐの村で解放されるはずだった。
国境で護衛騎士(監視人)が護送車から辻馬車にフィオナを移すと枷を解いて
「もう二度と戻ってくるな」
憎しみのこもった目を向けてフィオナを見ながらつばを吐いた。
屈辱に耐えながらギュッと唇をかんだ。
無実だといくら言っても,ミッシェル・ブラウニ男爵令嬢の取り巻きの、有力貴族令息達に根回しされ、証拠をねつ造され反論も許されなかった。
友人にも兄弟や両親にも見放されたフィオナ、それでも気位は高かった、国外追放されてもしたたかに生きていこうと思っていたのである。
家庭教師や孤児院や教会で働けないかと考えていた。そう甘いものではないのだが、それでも希望を持たないと泣き崩れそうだった。
みっともなく泣き崩れるのはプライドがゆるさなかったのである。
しかしそのプライドもミッシェル・ブラウニ男爵令嬢に打ち砕かれた・・・・
国境から村までは冒険者2人に御者と護衛、監視を依頼、騎士は国境を越えられないからである。
しばらく辻馬車は村をめがけて走っていたが、[迷いの森]の入り口付近で馬車が止まった。
「おい降りろ!小娘!」
腕をつかみ馬車から引きずりおろされたフィオナ
「なにをするのですまだ村に着いていないではありませんか」
フィオナは嫌な予感しかしなかった
「嬢ちゃんがよう~あんたが邪魔なんだと、何処かで生きているのも嫌なんだとさ」
「嬢ちゃん?・・・・もしかしてミシェルさんのことですか?」
「おいおい仮にも王太子の婚約者に(さん)じゃねぇだろ(さま)だろうが!」
バシッ!冒険者に平手打ちされた。
「あんたを殺して俺らの依頼は終了さ、おっと嬢ちゃんに証拠として腕輪を持って来いって言われてたんだった」
男はフィオナの左手にある宝石や魔石がちりばめられた腕輪に手をかけた
「ん?取れねぇ・・・」
腕に吸い付いているような腕輪、腕から取れなかった
「おい!斧持って来い」
「切るのか?」
「取れねえからな、どうせ殺すんだ」
フィオナは真っ青になった
「やめて、ゆるしてお願いします」
「これで俺たちも大金持ちだぜ一生遊んで暮らせる」
フィオナのことなんか聞いても見てもいない
「おい斧よこせ、小娘の腕押さえろ」
「いやぁ~!!」
ザシュ!
「きゃ~っ!」
フィオナのブレスレットのついた手がごろんと落ちた
その途端、フィオナの体から大量の魔力が溢れ出した。
『逃げなきゃ!死にたくない』
腕を拾っている男の横をすり抜けてフィオナは森に向かって逃げ出そうとした。
男が気が付き
「待ちやがれ」
抜かれた剣で背中を切られた、血しぶきが舞う,しかしフィオナは止まらなかった。
雨が降ってきた。
フィオナは雨の中、恐怖に顔を強張らせながら左腕を抱えるように魔物の巣くう[迷いの森]を走っていた。
『背中が熱い、腕が熱い』
背中に大きな切り傷、切り落とされて無くなった左手を巻いているショールは血で真っ赤になっている。
「こっちだ!」
近くで男の声がする。
『怖い怖い、死にたくない!』
無我夢中で走る彼女の顔や腕、足は枝や草により切り傷擦り傷だらけである。
本当なら気絶してもおかしくない大けがであるにも関わらず、それでも足は止まらない。
フィオナの体から魔力があふれ体を覆っている。
大けがをしているのに体は軽かった。
付近に嫌な気配がする男の物ではない邪悪な気配
ざっ
と横から出てきたのはウォーウルフ、魔物である。
普通の狼と違いは目が普通の狼は金色に対し赤くそして尻尾が二股になっていて2倍の大きさがある。
「ひっ」
と少しスピードを落としたフィオナだったが直ぐにウォーウルフ
を避けるように方向を変え走り出した。
ウォーウルフは追いかけてくる
「いやいや、魔物いや」
ウォーウルフが回り込んで、フィオナにめがけ飛びかかってきた
とっさに左に飛んだフィオナだったが飛んだ先に地面がなかった
「きゃぁ~」
ドボンッ
「うっぷ、ごぼごぼごぼ」
川に落ちたフィオナはおぼれかけながら川を流れて行った
どうにか川面に顔をだすと遠く崖の上ににウォーウルフの影が見えた
暫く流されていくと流れが緩やかになり、ゆっくりと岸辺に上がることができた、
大きな平たい岩の上にぱたりと倒れ体を丸めた
左手を覆っていたショールは川に流され、顕わになった手首から先のない自分の手
巻き込むように胸に抱えて目をつむった
「寒い、寒い・・・怖い、魔物いや皆消えてしまえ」
フィオナの体にまとうように溢れていた魔力がゆっくりと彼女の周りを中心に広がっていく
『ステータス』なんとなく頭の中で思いついたら、目の前に何か現れた気がした
数字が見える
上の方の数字
【レベル: 1/∞ 】
【体力: 2/20 】
【魔力:4.45億/5億 】
?
【レベル: 5/∞ 】
【体力: 50/100 】
【魔力: 4.3億/25億 】
?
【レベル: 10/∞ 】
【体力: 100/1000 】
【魔力: 2.5億/100億 】
?
【レベル: 30/∞ 】
【体力: 300/3000 】
【魔力: 2.0億/600億 】
?
広がっていく魔力の大きさに対するように後ろの数字が上がっていくのを失う意識の先に見た気がした。
意識が飛んだ、フィオナの魔力はそれでも広がり続けた。
半径100キロ程で魔力は一気に収縮し小さいドーム形状をフィオナの上に作ると、ドームの中に雨は入り込ます彼女を温め始めた
静かな寝息が聞こえる。
【レベル: 60/∞ 】
【体力: 600/600000 】
【魔力: 1000/12兆 】
人気のないさびれた倉庫の中
「で、証拠持ってきたでしょうね」
ミッシェル・ブラウニ男爵令嬢が腕を組んで冒険者たちの前にいた
後ろに男爵家の護衛が2人、倉庫の外に3人、倉庫を囲んでいた
「はい、これがクランドール伯爵令嬢の腕です、腕輪がついてるでしょう?」
「腕輪だけでよかったのに気持ち悪いわね」
「取れないんですよ、魔法具ですかね?腕に癒着してるようで」
フィオナを結局見失った冒険者達、ウォーウルフの遠吠えを聞いて
魔物の森の中、あの怪我で助かるわけがないと探すのをやめて引き返していた。
「ま、いいわ後で誰かに外させるわご苦労だったわね、もう用は無いわ」
護衛が冒険者の心臓に剣を突き刺していた。
「国境沿いに捨て置いておいて」
「かしこまりました」
国境付近で護衛の冒険者のく食い散らかされた無残な遺体が発見され
フィオナ・フォン・クランドール元伯爵令嬢の遺体は発見されなかったが
死んだと判断されたのはそれの数日後のことだった。
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