禁忌魔法で無双中

黒狼 牙

転移

ピピピピッ ピピピピッ


「....はぁ....」


部屋に目覚ましの音が鳴り響き、俺はため息と共に起き上がる。

俺の名前は黒木 幸助。身長が平均よりちょっと高めで、だいぶ目つきが悪いことを除けば平凡な高校生だ。

俺は起きると階段を降りて、そのまま昨日の夜に買ったパンを食べ、朝食を済ませる。

俺の両親は共働きで家にはほとんどおらず

いつも朝食は一人だ。

朝食を食べると直ぐに制服に着替えて、外の様子をうかがう。


「......おっ! 人通りが増えてきたな。そろそろ行くか。」


俺はいつも登校集団のちょっと後ろで登校している。

それは、俺が目立たないようにするための方法の一つだ。

目立ちたくない理由を、挙げるならこの目つきだろう。

俺はこの目つきのせいで昔から皆に怖がられている。

おかげで友達は一人もいない。

一度はこの目つきを変えようと人の前で笑ってみたりしてみたが、結果は散々で、教師も近づいて来なくなった。

その日から俺はとにかく人の目につかないように、浮かないように過ごしている。

そうこうしているうちに学校に着き俺は教室の席につく。

するとすぐに、


「ヤッホー幸ちゃん!おっはー!」


と、元気に声を掛けられる。

俺の前には赤城 凛という女子がいる。

こいつは学年のアイドルの様な存在で、いつも明るく友達いっぱいだ。

プロポーションも抜群で学校にはファンクラブもあったりする。

そんな奴がなぜ俺のことを「幸ちゃん」などと呼ぶのか全くわからない。

俺は返事を返そうとすると、


「やぁ凛、おはよう。今日も黒木と話しているのかい?本当に凛は優しいね。」


この爽やかなイケメンは、蒼山 駿一。

成績優秀でスポーツ万能な、クラスのリーダーだ。

いつもバレンタインには、こいつの下駄箱やロッカーは手紙付きチョコで溢れている。


「それに比べてお前はなんだぁ!あぁん⁉︎

赤城が挨拶してんだから返すなりしろや!」


青木の隣にいる男は、緑間 龍弥。

身体が巨人の様にでかく、ラグビー部だ。

筋骨隆々という言葉を形にした様な見た目をしている。

青木とは小学校からの親友で二人はいつも同じ時間に登校してくる。


「まぁまぁ龍弥、そんなに怒らなくてもいいじゃないか。でも、黒木も凛が話しかけているんだからもっと愛想よくしてもいいんじゃないか?」


俺は早急にこの場を乗り越えるために、


「あぁ...すまなかったな」


と返す。

すると、


「なんで黒木くんが謝るのよ?何も悪い事してないじゃない。」


そう蒼山と緑間の後ろから聞こえた。

その声は紫原 透華だった。

彼女は赤城の幼馴染で小さい頃からの親友らしい。剣道部のレギュラーで全国大会で最優秀選手賞を取りこの前賞状をもらっていた。


「そもそも緑間!黒木君はさっき返事を返そうとしてたのよ!それをあんたが先に突っかかってきたんじゃない!」


彼女は男勝りで誰に対してもはっきりしている。

そのせいか、一部から「お姉様」や「クールビューティ」と呼ばれている。


「んなもん知るかよ!こいつはいつもこんな感じで話さねぇんだよ!せっかく赤城が話しかけてんのによ!」


「それはあんたが先突っかかってるだけでしょうが!もっと頭使って動きなさいよ!

あんた暴れすぎで、頭悪くなったの?」


「んだとテメェ‼︎言わせておけば!」


「龍弥、その辺に... 」


「透華ちゃんもほどほどにしてよ〜...」


「......はぁ......」


本日二回目のため息だ。

俺は赤城に話しかけられるたびにこの様なやりとりを見せられるのだ。

違うところでならいくらやっても構わないが

自分の前でやられるのは目立ちすぎて嫌だ。

俺は、諦めてその場を立ち去ろうとした次の瞬間、


カッ‼︎


バシュッ‼︎


突然の音と衝撃でクラス全体が光った。

次の瞬間、俺の意識は暗転した。









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