彼氏と彼女の可愛い日常

nisekoi

第1話黒柳美咲(ヤンデレ)と雅裕太(S)の日常

 一ノ瀬学園二年A組に在席する俺、雅裕太みやびゆうた黒柳美咲くろやなぎみさき

俺らは付き合っている。


美咲の容姿を簡単に説明すると、きめの細かい白い肌に、大きくてくりくりとした茶色の目、頭を撫でても一切の引っ掛かりも許さない黒くつややかな髪、形が整い潤いを魅せる薄桃色の唇。

と、言ったところだろう。

まぁ、後は想像におまかせするが、相当可愛いのは事実だとだけ述べておく。(補足だが、身長は低めで胸はかなりデカイ。大切な事なのでもう一度言うが、胸はかなりデカイ。)


性格面で言えば、結構奥手な方だろう。

学校でまともに話せる生徒は俺ぐらいなんだと思う。

だが、それ故か独占的が強い。非常に強い!

たぶん、俺じゃないと引いちゃうレベルで。

俺からしたらこれは自分のことを好きでいてくれてる証拠である。

嫉妬で女を狂わせるなんてのはやっぱり男のロマンじゃん。


<注、個人の変質的な意見です。全ての男がこんなゴミみたいな恋愛観を持ち合わせている訳ではありません。>


その彼女とは今、現在進行形で下校中。


家がそもそも近いお隣同士···つまり幼馴染みという関係性である。言わずもがな家まで簡単に送れるし、一緒に登校できる。家がお隣である幼馴染みだけの特権だ!


····これで分かって頂けただろうか?俺が奥手な美咲とどうやって親密に成れたのかが。


ふぅ、答えは簡単だ、4歳から今までの間、ひたすら家に通って遊ぶこと。

こうでもしないと美咲の心は開かねぇ。

うん、つまり努力の結晶なのだ、今美咲と付き合えてるのは。

正直今までの話からして、俺は美咲の容姿にだけ惚れたと思われるかもしれないが、そんな訳ではない。家事が得意だったり、一緒に話ていても話題は尽きなかったり、勉強教えてくれたり、そばに居るだけで落ち着いたり·····

俺がいじめられてる時にあまり人前が得意なわけでもないのに「やめなよ!」と立ち上がってくれたり。

それも全部ひっくるめて俺は美咲のことが好きなんだ。

容姿なんてのはその魅力の中のひとかけらでしかないのだ。



そんな努力の結晶の(女神にも勝る程に)可愛い彼女さんが抱きついてくる。

「ちょっと裕君私の話聞いてる?さっきからボーっとしてさ~。もしかして他の女の事考えてたとか言わないよね?」

「他の女の事考えてた。」


「····はぁ?なにそれ、裕君は私と付き合ってルンダヨネ?なんで他の女の事考えてんの?もしかして頭おかしくなっちゃたの?、私裕君に捨てられたら死んじゃうよ?だって私には貴方しかいないもの、裕君が居ない私の人生なんてとてもじゃないけど生きていけない、だから···ね♪、考え直して?」


うわ、良い感じに食い付いたけど······カッター片手にそれ言われると説得力半端ないな····。でも、やっぱ可愛い。(···カッター片手に握り締めてる彼女見てこう思う俺って····変か?)


ニヤける顔を押し殺し、すぐさま返す。

「いやいや、俺が美咲を捨てる訳ないだろ?」

「じゃあなんで他の女の事なんか考えてたの?」


····やばい、この後全然考えてなかったぁぁぁぁぁぁ。このままだとこの子、今にも頸動脈けいどうみゃく切っちゃいそうなんだけどぉぉぉぉぉぉぉぉ。なんか良い言い訳とか無いか?、もういっそ抱き締めてキスでうやむやにするか?

どれが正解なんだ····。

そして思い付いた最善策が····


「俺実は今日、B組の人に告白されたんだ。だけど俺にはそいつと比べ物にならない位可愛いお前が居るから即答で「無理です」って言ってやりたかったんだけど直ぐに告白だけして走って逃げちゃったから明日どうやって振るか考えてたんだよ。心配させたならゴメンな。俺の言い方が悪かったよ。」


キタァァァァァァァァ!

この回答は100点、いや120点だろ!

彼女のことを褒めつつ、自分も軽く謝罪し、何より、俺がお前以外の女になんか興味ねぇアピールが出来た!!まぁ、実際そうなんだけど。


「ごめん、私ちょっと早とちりしちゃってたよ。それにそうだよね、裕君は一生私一筋だもんね。でも、その言い方も言い方だよ!、勘違いしちゃってもしょうがないじゃん」

そう言いながら、頬をプクーと膨らませ、カッターをポケットにしまう。

鞄に戻さない所がいかにも美咲らしい行動だった。


「ごめんって。でもまぁ、お前越える程の可愛いくて良い女性、この世に存在しないとおもうけど?」

「ほ、褒め過ぎだよ····。じゃあ、その可愛い彼女から世界一かっこいい彼氏さんに質問良い?」

「あぁ、何でも聞いてやるぞ♪」

「じゃあ、言うね?」

「おう!」



「B組に好きな人が出来たんだけど、その男の人とどうやって距離を縮めれば良いですか?」


瞬間、時間が止まった。

え?、美咲?、好きな人?、他のクラスの奴?、てことは···もう俺に興味ないってこと?、振られるの?、こんなにも好きなのに???


正に、暗闇の中に突き落とされた様な感覚だ。どんだけもがいても、それをまた深い闇が呑み込む。息が···苦しい。


「ご、ごめん!なんか悪い事したなら謝る!ちゃんと償う!だから···俺から離れて行かないでくれ!····頼むから···」

俺は···泣いていた。こんなに涙をこぼしたのはいつぶりだろうか?

とてつもない後悔が俺を襲う。

なんで嫌われるようなことしたんだって。


少しの沈黙の後、美咲は口を開いた。

「どう?つらかった?」

「苦しかったしつらかった。もう死のうかとも思った。」

「そういう事だよ?彼女の前で他の女の話をするってことは。もう、死んでも良いいって平気で思えちゃうんだよ?これで、私の気持ち、少しでも分かってくれたかな?」

少しどころか、痛い程分かった。

俺はイタズラ半分で前にもこんなことをした覚えがある。

その時も美咲がこんなに苦しい思いをしていたと思うともう涙が止まらない。


「フフフ、でもどちらにしろ、私には結局裕君しかいないから、どんなに苦しくされても、大好きなんだけどね♪」


それを最後に、美咲は自分の家へと姿を消した。



その後俺が道路脇でうずこまりひたすら泣き続けたのは言うまでもなく、また、それからも俺らの関係が変わらず良好なのも、言うまでも無いのである。







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