Reborn〜新しく生きる〜
えりらはのし
第1話1999年
あの頃の私には「希望」しかなかった。
人は辛いことがあると過去の良かったなぁと思う時を思い出す。
今の私はどう見ても暗い。なんで結婚なんてしてしまったんだろか?そのことに後悔しかなくて、毎日毎日なんで?どうして?って頭のなかがぐるぐるまわってる。
1999年、私は毎年恒例のように年末はロンドンで過ごした。この年はイタリアで十なん年ぶりかの寒波だったらしくイギリスのヒースロー空港で待ち合わせをしていたはずの友人が、イタリアから帰って来れず会うことができなかった。今日からの数日間をロンドンに住んでいる友人宅で過ごすはずだったのに、ここで会えなかったら私は遠い日本からやってきてどこに行けばいいのか不安が頭をよぎる。
当時の私は35歳、そこそこ歳をとっていたとしても好きなことをやっていた毎日で怖いものなんかなかった。イギリスに向かう飛行機も一人で乗り込んで大抵となりの席に座る人も一人旅だったりするから飛行機の中でも楽しく過ごせるものなのだ。案の定、隣の席は5歳くらい年下の女の子で名前は「きみちゃん」、ポストファミリーのママに会うために一人でイギリスに行くというではないか。泊まるところも空港について探すというので、だったら私の友人宅に一緒に泊まる?なんて軽く話が盛り上がっていた。
お酒大好きなんて言ってる私は当時ANAのブッラッディマリーがたまらなく美味しくて、席についてすぐに今でいうCAを呼んでは「ブラッディマリーをお願いします」と言って、きみちゃんと何杯もおかわりをしていた。しまいには「お客様が全て飲まれて在庫がなくなってしまったので、差し支えなければ私が作ったものでもよろしいでしょうか?」とCAに言われたほどだ。きみちゃんも相当飲みますわな。
到着する頃には、結構酔っていて私もきみちゃんも飲み過ぎて足むくんでるねぇなんて始末。ヒースローに到着してしばらく機内で会ったきみちゃんと友だちを待っていたけど、どれだけ待ってもやってこない。どうしちゃったんだろ?しばらく待っていたら、放送で私の名が聞こえる、ここで待つようその放送はいっている。見知らぬ20代の男の子が私に近づいて来て「りえさん?」と声を掛けてくる。「そうですけど」男の子はパッと笑顔になって、私の友人から頼まれたと言ってイタリアの寒波で帰ってこれないから今日は迎えに来れないという伝言を伝えてきた。
これからどうする?という話になって、機内で出会ったきみちゃんとホテルを探して今晩はそこに泊まろうということにして男の子にその旨を伝えた。今思うと、どうやってホテルを探したのか思い出せないけど、友人の携帯電話にホテルの連絡先を残して私はきみちゃんとその晩を楽しく過ごした。
翌朝、友人がホテルへ迎えに来てくれてきみちゃん共々その日から友人宅へ泊まることになった。ロンドンは最高でございます。日本と少し似ていて、移動は地下鉄で好きなところへ行き、バスも便利に使える。小さい町なので、行きたい店もすぐに探せて歩いて楽しめる、まるで新宿を歩き回っているような錯覚に襲われる、ただ周りを見渡すと外人、外人、外人に囲まれて聞こえる言葉はイギリス英語であるということ。そして大晦日の朝に、きみちゃんはポストファミリーと年越しを過ごすと言って旅立って行った。
この年は1999年から2000年に変わるミレニアム。イギリスといえばビッグベン、そう思うのは私だけかもしれないけど、年越しはビックベンでとテムズ川のほとりの人がごった返すなか友人と彼と私の三人で人混みのなか定位置を探した。
日本よりも日が短くて寒いのに、テムズ川ほとりは熱気でむんむんしている。振り返ると白人女性と黒人男性のカップル、美男美女でモデルかなこの二人と思えるほど素敵なカップル、当時イギリスのタバコは一箱500円以上するので二人で少しずつ吸って短くなったタバコは捨てずにBOXへしまう。日本では「シケモク」というが、あとでまた根っこまで吸うつもりなのだろう。人目を憚らず、見つめ会ってはキスをする。そんな光景すら絵になって、イギリスは素敵だわぁと私はにやけてしまったものだ。
人混みで窮屈な中、嫌な気分になることもなく楽しい会話で盛り上がってやってきたカウントダウン、ビッグベンにみんなの視線がそそがれ鐘の音とともに歓声があがる。友人たちと「おめでとう」を何回もクチにして帰り着いたのは朝方だった。
ロンドンの正月は店も閉まっていて静かだった。
日本へは、会社が始まる前日に帰った。2000年が始まり、都内の景色はロンドンで見たカラフルな建物から一変してグレーな景色、それがいかにも日本らしいなと感じた。ロンドンではイタリア人の彼氏と仲睦まじい友人がいて、二人で私を楽しませようとしてくれる。私も恋がしたい。心から「好き」って思える人に出会いたい。恋愛とは程遠い印象の私だけど、こころの中では恋にこがれる少女のように恋に飢えていたのであります。
そんなの私の仲間は微塵も思っていなかったはず。
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