第24話 消えない結界
日向の頭に浮かぶのは妹の言葉。
――この街に張られる結界は二種類。魔術師が発動して張られる結界と、敵性人外または攻撃性魔術に反応して自動的に張られる結界だよ。
自動的に張られる方は原因が取り除かれればすぐに解除されるとのこと。つまり、この結界は誰かが発動したものか、それとも原因がまだあるのか。
「近くに俺たち以外の魔術師がいるってことか?」
「でも快斗、もし誰かが張ったんだったらそれって人外の出現に対応してってことだろ。それなのに俺たちの前に姿を現さなかったのはおかしく……いや待てよ」
「どうした日向」
「快斗。自動的に張られる結界は、人外に反応して発動するんだよな」
「ああ、俺はそう聞いたぞ」
「俺もそうだ。だったら人外の出現に合わせて結界を張った魔術師がいるってのはほぼあり得ないんじゃないか?」
「どうして……って考えてみれば確かにそうか」
そう、この街では人外の出現に反応して結界が張られる。つまり、結界が張られる前に魔術師が出現した人外を認識すること自体が難しいということだ。
「もしも出現から結界発動までにタイムラグがあって、その間に発動した魔術師がいたとしたら俺たちよりも先に交戦しているか、少なくとも視界に入っていないとおかしいよな」
「だな、つまり――」
「「原因がまだ残っている」」
「可能性が高いとしたらさっきの人外の出現位置付近か?」
「だろうな。多目的ホールの東扉から来たってことは管理棟側だ」
多目的ホール自体は特別棟の三階にあり、特別棟の東には管理棟がある。そしてその管理棟二階から北東に向かって一直線に長い廊下が伸びており、そのどんつきが体育館だ。この廊下から魚の骨のように東に向かって三棟校舎が並び、いま日向たちがいるのはそのうち一番体育館に近い棟である。ということは他の人外を見つけ出すためには駆け逃げてきた廊下を引き返す必要がある。
二人はそんな面倒な校舎構造にげんなりした表情を浮かべつつも、顔を見合わせ頷き、教室前方のドアへと駆け出した。
先頭でドアを引き開いたのは快斗。そのあとを日向が続く。そして数メートル向こう左手にある階段。日向がそこに差し掛かった時、一体何段飛ばしで駆けあがったのだろう、快斗は既に踊り場から次の段へ向かおうとしていた。
「身体強化か? 速すぎだろ」
姿が見えなくなった快斗を日向は出来る限りの全速力で追いかける。
一段飛ばしで駆け抜け、踊り場は手すりを掴んでの急ターン。またまた二段ずつで上り、二階に到着。教室棟の廊下に出ると、あの長い廊下との交差点で立ち尽くす快斗の姿が見えた。
「おい快斗、そんなところで立ち止まってどうしたんだよ」
日向が声を掛けながら快斗に近寄ると、快斗はこわばった表情で振り返った。
「日向……あれ……」
そう言って快斗が指差すのは、グラウンド。廊下の北西が全面ガラス張りになっているためにその全体を見渡すことが出来る。
そしてそちらに目を向けた日向は言葉を失った。
「嘘……だろ……」
体育や部活動のために取られただだっ広いグラウンド。
しかし今、そこには人外と思わしき巨体が数えるのも嫌になるほどひしめき合っていた。
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