第21話 十発の弾丸
「――ドライブトゥオーディナリー」
聞こえたのは突然だった。
「よし、できたか。待ってたぞひな――」
待ちに待ったその声に拳と竹刀で競り合っていた快斗は振り向き、直後顔を背ける羽目となる。
咄嗟の判断が功を奏し、目へのダメージを回避した快斗。彼はため息をつき、呟く。
「通常駆動で霊威って自己申告してたが、マジだったんだな…… ほんとにチート乙」
快斗が見たのは、身体から眩い光の粒を巻き上げつつ立ち上がる日向の姿だった。
魔力が光を放っているということは少なくとも霊威魔力ではあるということで。
しかしとてつもない量が身体の外へと湧き出していることから察するに、生成、圧縮された魔力が制御されずにそのまま放出されているのだろう。
そんな光の渦の中心にいる日向はというと、立ち上がりつつ目を開けて……
「うおっ、眩しっ」
自分の発する光に驚いていた。
遠い目をしていた快斗の耳に響く日向の声。快斗は苦笑いを浮かべると日向に声を掛ける。
「とりあえず魔力の手綱握って体内にためろよ。そんでなるたけ早くこいつを仕留めてくれ」
「了解。さっきみたいに魔力弾を撃てばいいんだな」
「ああ、頼んだぞ」
日向は快斗の後ろ約五メートルの位置で黒と白の拳銃を、それを持った両手を前に構える。
そしてそっと目を閉じ、精神を集中する。
彼の身体から立ち上る粒子が収まり、同時に日向は唱え始める。
「思い浮かべるは敵をうがちダメージを伝える弾丸。先端にはすり鉢状の窪みとその縁には切れ込み。さらに表面には先端側からみて放射状の溝。薬莢、発射用魔力とともに構成して、弾倉に五発ずつ……装填っ」
咄嗟に構成した先ほどとは違い、効果的な弾を確実に選択する日向。
彼が構成したのはホローポイント弾と呼ばれる弾丸。先端を尖らせかつ、硬い材質で覆うことで貫通を主眼に置くフルメタルジャケット弾とは違って、その形状から命中すると先端が花びらが開くように変形していき弾丸のエネルギーが目標に効率よく伝わる弾丸。つまり、相手に大きなダメージを与えかつ、貫通による二次被害も抑えられる弾である。
無事に発射準備を終えた日向は再び目を開くと巨人に照準を合わせ――
撃つ
撃つ
撃つ――
日向は乾いた発射音とともに反動で手を跳ね上げつつ弾倉が空になるまで右手、左手と交互に引き金を引いた。
合計十発。
縮化魔力かつ貫通主眼の弾で相手をのけぞらせていた魔力弾である。日向が流石に仕留めただろうと思って巨人を見ると、それは全く堪えた様子もなくぴんぴんしている。
「へっ?」
呆けた様子の日向に、快斗が心からの叫びをあげる。
「日向ぁ。こんなデカブツ相手に何全弾外してんだよぉぉぉ」
日向の放った弾は全てが巨人の肩の上を通り過ぎて行ったとのことだった。
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