元中二病の魔銃使い

山石竜史

第1話 元厨二病の一人語り

 魔法や人外、心霊現象、超能力。


 そういった類の超常現象を信じているだろうか。

 そこには様々な意見があると思われる。物理的にあり得ないとか、いや実際に子供のころ体験したとか、人の脳が起こすうんたらかんたらとか。

 そんな理屈はともかくとして、超常現象があったらいいなと考えている人は数多くいるだろう。瞬間移動ができたら遅刻とは無縁だろうなだとか、空を飛べたらさぞ気持ちいいだろうなだとか。そう思う人がたくさんいるからこそファンタジー小説が出版され、SF映画が上映され、そして厨二病患者が生み出されるのである。

 だから、想像力豊かな少年が厨二病に罹患してしまうのは仕方ない。



 椅子に座って語るこの少年。彼ももちろん厨二病患者であった。そう、ただの言い訳である。そして少年はこう続ける。



 超常現象をただの空想だと言う人は多い。ただ、超常現象と空想というものはあくまで理論の上においては紙一重だったりすると思う。なぜなら、空想であるはずのものを視覚、聴覚、嗅覚、味覚そして触覚、五感で感じてしまえばそれは現実に起きているものと何ら変わらない。事実と全く区別がつかないのだ。催眠術で違うものを食べているのにレモンの味を感じてしまったりするのもそうだろう。この場合は超常現象とまでは言えないかもしれないが、レモン味の別の何かという十分なものではある。そう、言ってみれば超常現象と空想の差は五感で感じ取れるかどうかというものでしかない。

 しかし、この五感で感じ取れるかどうかというのはなかなか大きな差でもある。なぜなら、超常現象は現象というからには観測者全員が観測できなければならないからだ。例えば一人だけが五感で感じて「これは超常現象だ」と騒いでも、周りの人が感じられていなければ、そいつは空想に振り回されて騒いでいるただの痛い奴になってしまう。空想を万人が知覚できるようにする方法、それがない限り空想はあくまで空想であり続け、決して超常現象とはなり得ない。最近バーチャルリアリティーの研究が行われているが、あれも空想に五感を与えようという研究と捉えられる。しかし、その技術も完成しておらず、使ったとしても今の段階ではそれを現実に起きている現象だとは感じられないだろう。そう、今日では空想は空想であり、現象に昇華することは出来ないのである。

 結局なにが言いたいかというと、年頃の少年少女が厨二病というものに罹ってしまうのは仕方ないとして、しかしそれはただの空想でしかなく、現実ではないということ。

 俺は空想を拗らせたただの厨二病、それだけだったのだ。

 そのはず、だったのだ。



 そうして、少年は夢から覚めていく。事実は小説より奇なりとさえ言われる、摩訶不思議の現実へと――

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