アンドロイド婚活で本当の自分を好きになろう

ちびまるフォイ

あなたにはアンドロイドが良く似合う

『本当の出会いがはじまる...ロボット婚活』



チラシが家に届いたとき鼻で笑ってしまった。

ロボット婚活て。どんだけ人間に飽きたんだよと。


そんなスタートだっただけに逆に興味をそそられ、

万物の英知「検索エンジン」様に調べてもらうことに。


「へぇ、自分そっくりのAIを婚活させて

 一番いい組み合わせの相手を探してくれるのか」


ますます興味の扉をあけられた俺は酸化してみることに。

場所は華やかな婚活なイメージからは程遠い研究所みたいな場所だった。


「えーー、ではこれからあなたのAIを作成します。

 そこに寝ているだけでいいですよ」


「寝ている間にオレに変なことしないでくださいよ」

「ぶっ殺すぞ」


医者は俺の頭にパーマ機のような装置をセットしてスイッチを入れた。

その瞬間、医者の座っていた椅子が高速回転し空に舞い上がって消えた。


「え……」


あまりの惨事に言葉をなくしていると、

ライブ会場のステージのようにアンドロイドが地面からせりあがる。


「はじめまして、私はあなたのアンドロイドです」


「わぁ……本当にできたんだ。すごい。顔もそっくりだ」


「触ってみますか?」

「声も同じなんだな」


「変なところは触らないでくださいね」

「ボケのタイプも一緒だぁ」


アンドロイドをペタペタ触る。

そのあともいろいろアンドロイドと話したりクセなども分析したが

これはもう第二の自分と言って過言ではない。


「よし、それじゃ婚活パーティへ行ってみてくれ」

「かしこまりました」


結果は追って報告されるということで、家で楽しみに待っていた。


< マッチング相手が見つかりました >


会ってみますか?  はい  いいえ


「会うしかないだろォォ!!」


アンドロイド同士の婚活パーティが俺の知らない場所で行われ

同じく気が合うアンドロイドの持ち主と都合を合わせて会ってみることに。


「はじめまして、今日はよろしくお願いします」

「あ、お願いします」


アンドロイド同士なので大丈夫かと不安だったが、

実際に会ってみても顔はまさに俺のストライクゾーンを射抜いてくる。


「なんだか、あなたとは初めてあった気がしませんね」

「あははは。俺もです。すごく楽しいです」


女性とのデートなんて精神的拷問と言い換えられるほど消耗するのに、

なぜかこの人とは不思議と話が合って、いつまでも一緒に居られる気がした。


「アンドロイド婚活って、最初は心配だったんですけど

 こういうのもいいですね」


「そうですか?」


「私自身が婚活パーティに行くと、男を求めてたあさましい焦ってる女ぽく見えるでしょう」


「いやそんなことは」


「というか、私がそう思われると、思っちゃうんです。

 でもこうしてアンドロイドだけなら、婚活への参加も恥ずかしくないです。

 私の友達なんかも結構やってるんです」


「へぇ、女性って大変なんですね」


話し込んでいるうちに時間もふけてきた。その日は別れて家に帰る。

ちょうどアンドロイド婚活からの連絡が来ていた。



< 今回の相手に決めますか? >

はい   いいえ   きみに決めた!



「なんでポケモントレーナー風……?」


選択肢はスルーして一晩ゆっくり考えた。

彼女とは話もあったし、顔も好みだし……でも何かが足りない。


「愛かなぁ……愛が足りないのかな」


良い友達には思えても、どうしても恋人には見えない。

これはアンドロイドが愛情を理解していないからかもしれない。



『いいえ』



今回の相手を見送ったあと、ふたたびAIの設定研究所に向かった。


「おや、どうしたのかな?」


「AIをもっと詳しく設定したいんです」


「いや、もう十分に君のことは理解されているよ。

 考え方から性癖、おしりについているホクロ毛まで」


「いいえ、まだ俺を理解できていません。

 愛を感じる相手を見つけ出すにはもっと詳細なプログラムが必要なんです」


「よし、いいだろう。君のやりたいようにやれ」


今度は手動で俺の考え方から何までAIに打ち込んでいった。

ますます俺に近づいたと思う。双子がいたとしてもそれ以上の近さ。


「満足したかい?」


「ええ、これ以上ないくらいに俺ができました。

 もう俺以上に俺を理解しているかもしれません」


「で、どっちがアンドロイド?」



「「 こっち 」」


お互いにお互いを指さした。博士は目を回して死んだ。

この息の合い具合もまさに完璧。


これならきっと「愛」を理解して、確かな結婚相手を見つけてくれるはずだ。


「システムオールグリーン。アンドロイド発進、どうぞ!!」


「アンドロイド、発進します!!」


かくして、俺の頭の中をしっかり搭載したアンドロイドは婚活に向かった。

やがてマッチング報告が帰ってきた。


「よっしゃ!! 今度こそ愛を感じるはずだ!!」


もうアンドロイドと共有していない部分なんてない。

そのAIがマッチングした相手なのだから間違いない。


「はじめまして!!」


俺は運命の相手に四半世紀最大の笑顔を見せた。



……その後、デートが終わるなりアンドロイドを呼びつけた。


「おい、なぜここに呼び出されたかわかるか?」


「給食費を盗んだわけじゃないですよね」


「ちげーよ!! 愛だよ!! 今回の相手も愛を感じなかった!!

 お前、俺をちゃんと理解しているんだろうな!?」


「もちろんです。どんな質問をされても

 あなたが考えていることと同じことを答えられる自信があります」


「なのにどうして!? どうしてお前が見つけてくる人間は

 どれもこれも愛情を感じないんだ! 愛情を理解できてないのか!?」


「いいえ、愛情ももちろん理解しています」

「だったらどうして!?」




「いえ、単にあなたが結婚相手に求める要素の

 "家事ができて美人で趣味が合って自分にたてつかない"

 という点に、愛情が含まれていないだけです」


アンドロイドはこともなげに告げた。

もう何も言い返せない。




「結婚向いてないのかな……」

「でしょうね。いいアンドロイド紹介しますよ」

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