6-4【天才ってのは、嘘なんですか?】
☆パペッター
思えば、記憶というものほど曖昧なものはない。パペッターの記憶なんて、少し前に戻ってきたものが全部になっている。
つまり、パペッターの記憶に正しいものがあるかわからすらわからないのだ。あるのは、このゲームの運営が自身を育ててくれたということ。
……この戦いの目的はパペッターを育てること。そしてもう一つあった気がするが、それはなおさら記憶が曖昧でわからない。
(……生き残れば、私の願い叶えることができるのかな……?)
とは言っても、願いがあるほどの自身がないのだ。今生き残っても、何もできない。しかし、死にたくはない。
だから戦う。セイバーの力を最大限に活用して、戦う。勿論念の為の策も作っていく。操ることのできる糸は無数にあるのだから。
「……いくぞ、セイバー」
「くるっ!セイバーさん!」
ファイターは言葉通りに駆け出していく。セイバーを操り、彼女の攻撃を受け止めようとした。
が、しかし——
「残念だが……戦う場所はここではない!」
ファイターはセイバーの腕を掴む。そして、そのまま点 天高く飛んで行った。ファイターの考えを理解したが、そのタイミングではもう間に合わなかった。
だんだんと点になり、そして消えていく二人。残されたのは、パペッターとガードナー。そしてギャンブラーの3人だった。
「……もしかして、セイバーさんと離して、1対2にしたら、勝てると踏んでますか?」
「そのまさかだとしたら……?」
「バカですね……天才ってのは、嘘なんですか?」
「嬉しいことに僕は天才だ。そうだな……次、起こることを予想してやろう」
根拠のない自信に見えた。しかしそれは、パペッターにとっては、大きくて、そして眩しく見える。
隣に立っているギャンブラーもそうだ。キッとした表情でこちらを睨みつけている。強い覚悟の表れと、捉えれるその姿勢。
もしかしたらもう私は負けているのかもしれない。そんな思いがふと頭をよぎった。でも、そんなこと認めない。
手のひらをみる。透明な、糸がうっすらと見えている。これはパペッターが意識しないと触れることのできない糸。人を縛るときは、意識をしなくてはならない。
意識を保つ。つまりはもうこれは覚悟の戦いなのだ。私は生きたい。死にたくない。その覚悟の強さは他を凌駕していると、確信できる。
こちらの戦いとセイバーの戦い。二つの戦いで意識を保てるか?いや、私なら保てる。
「では、答え合わせといきましょうか?」
「舐めるなよ操り人形。さて、覚悟はできてるだろうな、負債者」
「……勿論……!でなければ、こんなところには……いないさ……!」
「了解……いくぞ、人形。次の貴様の行動は——」
言わせるか、そんなもの。パペッターは目を見開いて、覚悟を指に込めていく。生きたいという意思は、それだけは……こいつらより、上だから。
◇◇◇◇◇
☆ファイター
「はぁっ!!」
地面にセイバーを投げ捨てる。彼女は人形のようにゴロゴロ転がっていくが、やがて立ち上がる。体についた砂等には意識は向いてないようだ。
成る程。本当に人形となってしまったのか。洗脳系の能力。それらはいくつかあったらしい。話に聞くところによると、キャスターとランサーという。
キャスターの洗脳は経験したことがある。心に直接声をかける。つまりは説得に近いものがあるのだろう。対してランサーは恐らく支配。
パペッターは、傀儡に変える。と、いう形であろうか。なんであれ、受けたくないし。もし傀儡になっているのであれば、セイバーを倒すことが、彼女を救うことになるのかもしれない。
セイバーだって嫌だろう。自分の意思なしでこれから生き続けるなんてことは……だからこそ、ここで決着をつけなければならない。
呼吸を整える。横にアーチャーを置く。これで大丈夫だ。もう迷いなんてない。
「……場所は違うが、あの時の決着をつけようか、セイバー。砂浜の戦いのな」
「…………」
いこう。行かなければならない。アーチャーとともに。そして、二人で超えるのだ。兄を。その先の壁全てを。
「——いくぞっ!」
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