4-14【慣れてますから大丈夫です】

 ☆ブレイカー


「……っと。これでいいですか?」

「はい!……完璧なはずです」

「三流アナウンサーと思えばギリ妥協点といったところか。あっと。そんなに気をやむんじゃないぞ。人にはできることとできないことがあり、たまたまキミはできないことの方が99%を占めているだけだ」

「ちょっ、ガードナーさん!あまり悪口言わないでください……」

「慣れてますから大丈夫です」


 ブレイカーの言葉を聞いて、パペッターは「そうですか」と言って、もう一度小さく礼の言葉を述べる。


 その礼をブレイカーは曖昧に受け入れる。そもそも礼を言われるような事をしたわけではない。ただ、放送をしただけだ。


 ジョーカーを倒すため味方を集める。そのための作戦としてパペッターが提案したのは、城の屋上にいきそこにあるシンガーのメガホンを使って、全マップに放送すると言った内容だった。


 その肝心の放送をする人物だが、パペッターは恥ずかしがり、セイバーはあたりの見回りにいき、ガードナーは「僕がそんなことするかと思うか?」と言い、消去法でブレイカーにの役目が回ってきた。


(しかし……これ、すごいな)


 ブレイカーは手にあるメガホンを見る。どうやらこのアイテムは自分の好きな音量を、それがずれることなくあたりに伝わるといったものだった。


 つまり、1メートル先も100メートル先も同じ音量で声が聞こえるのだ。近くで使って鼓膜がーということにはならない。


 もしこのアイテムをキャスターが拾ったなら……きっと何もできずにキャスターが言うによって、いいように使われて終わっただろう。


 そんなこと考えると、風が吹く。その風がやんだ時、パペッターが小さく呟いた。


「はやく、だれか来てくれないかなぁ……」

「……そうですね」


 そう答えるが、人はあまり来て欲しくはない。あまりに多く来ると、ガードナーとの作戦をやらなくなってしまい、ここにいるすべての魔法少女を犠牲にすることはできなくなってしまう。


 そもそも、もし……初日のシンガーのようにジョーカーが誘われてここに来て全滅。なんてオチは、御免被りたいところだが。


 もちろん対策はしている。セイバーが辺りを見回っている。彼女の手にはガードナーが作った結界の塊があり、人が集まった時、これを割る。


 さらにこの城自体にガードナーかま弱めの結界で囲っている。人が入ると少しだけガードナーが嫌な顔をするので、誰かが来たかわかる。


 なぜ嫌な顔をするか。どうやらくすぐられるような感覚があるらしく、それはなるほど気持ち悪い。


「……ムッ」


 そう思っていたら、ガードナーが少しだけ嫌な顔をした。人が来たのかと思うが、しかし何かを感じるのは入口の方からではない。


 顔を見上げると、何かが飛んで来ている両手を振りながらからそれは、名前は確かセイバーから聞いたことがある。確か——


「おーい!!会いたかったでー!」


 そう、ブースターだ。



 ◇◇◇◇◇


 ☆ブースター


 ようやく会えた。セイバーへとつながる道に。


 ブースターは放送で集合場所を聞いた瞬間、空に飛んだ。そして一直線に城に向かって突き進む。そこにいる小さな女の子に手を振りながら、城の屋上に降り立った。


「自己紹介いるか?ウチはブースターや!よろしゅー!」

「ははは……よろしくお願いします。私はブレイカー。あそこにいるのがパペッターさんに、ガードナーさん。それと今はここにいませんが……セイバーさんもいます」

「そうかそうか……って、セイバー!?」


 ブレイカーがびくりと体を跳ねさせる。大声を出して驚かせてしまったらしい。ブースターは謝りながら、セイバーの事を聞く。


 どうやら今は見回りに行っているらしい。ジョーカーを見つけたらすぐに戻って来るように言われているらしい。


「見回りなら、ウチにも任せてくれんか?どうせ来るまで暇やし……」

「えっと……」

「やめておけ。ここでキミが馬鹿みたいに外に出た結果、ジョーカーに対抗できる戦力が減る可能性がある。キミは今死ぬのはやめて後で死ぬ事を考えろ」

「……なんやあんた。クッソむかつくわぁ……」


 ブースターはこういうタイプの人間は嫌いだ。しかし今は我慢しよう。セイバーにも会えるし、彼女の言い分は間違ってはない。


 後で死ぬ事。つまり、生きろと彼女は言ってくれてるのだろう。ここで半日生きただけだったが、かなりそういうところは研ぎ澄まされて来たらしい。


 じゃあ、待とうか。ブースターは床の上に座り込んで、大きく伸びをした。空は、いつもより明るく見えたのだった。

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