4-15【生きてればなんとかなるんスね】

 ☆クリエイター


 突如聞こえてきた放送内容。それは彼女たちにとっては渡りに船といったようなものだった。確認はするが、満場一致で城に向かうことを決める。


 一番賛成したのはファイターだった。どうやらアーチャーに会えると思っているらしく、なるほど確かにアーチャーなら、こういった誘いなら返事をする前に向かっていることだろう。


「もし罠なら……どうする……?」


 ギャンブラーが遠慮がちに声をかける。もちろん罠の可能性を捨てているわけではない。しかし、今。この状況で罠を仕掛けるとは思えない。


 残りは10人。そしてそろそろ単独でジョーカーを倒すのは難しいと、皆思い出すだろう。この戦い。とにかくここから出たい人も多くいるのだから、ジョーカーを倒すために手を組む。というのは自然な流れだ。


 城までは意外に遠い。最初は歩いていたファイターだが、やがてしびれを切らしたように一言声をかけて走り出す。


 止める言葉すら届かない。今この場で戦闘職なしの二人だけにしたら、何が起こるか。ファイターにもわかるはずなのに。


 しかし、仕方ないことかもしれない、彼女とアーチャーはとても仲が良かったのだから、早く会いにいきたくなるのだろう。


 というわけで、今はファイターを抜いた二人。クリエイターとギャンブラーで道を歩いていた。一応ギャンブラーはガンナーの銃。クリエイターはソルジャーの剣をそれぞれ持ってはいるが、無言だとなんだか怖い。


 もしこの場にアーチャーがいたら、楽しそうに会話を始めるのだろう。彼女に会いたいという気持ちが巻き起こるが、今は自分から話すしかない。


「あの……」


 声をかけようと思ったが、なんと言えばいいのだろう。そんな時間が過ぎていく中、ギャンブラーが口を開ける。


「……お前は、何才くらいだ……?」

「は、えっと……記憶の問題もあるっスけど……あってるなら、多分16歳くらいっスかね」

「となると……高校生……っ……圧倒的若さ……!」

「あはは……ギャンブラーさんはどうなんっスか?」

「……記憶が正しいなら、26くらいか」


 26……となると、彼女は社会の荒波を経験しているのだろう。先輩ならば、少しこの先のことを聞いてみてもいいだろうか。


「あ、あのぉ……」

「……先に言うぞ……!私は小卒……!」


 小卒!


 その言葉を頭の中で繰り返す。小卒なんて、この世にいるとは思わなかったクリエイターは、なんと返せばいいかわからず、口ごもる。


 しかし本当に小卒ならば、学校生活のことは聞けそうにない。だとするなら、どうやって26まで生きたか聞くべきか。


「……ギャンブル……だ……っ」

「ギャンボぉ……」


 名は体を表すというか。彼女の話を聞く限り、ギャンブラーは小学校を途中で卒業させられ、そのままギャンブル好きの親に育てられたらしい。


「小卒で困ったこととか……あります?」

「……そうでもないな……っ……必要な知識は生きてれば……つく……っ!」

「……生きてればなんとかなるんスね」

「だが……真似はオススメしないな……っ」

「そうっスね……リスペクトは流石に……っと、ついたみたいっス」


 話しているうちにいつのまにか城についていた。なぜかあたりに薄い膜のようなものがあるような気がするが、触れても何か起こる気はしない。


 ギャンブラーの色んなことを聞けたような気がする。これを境に彼女と仲良くなれたらいいなぁ、と、クリエイターは考えていたのだった。



 ◇◇◇◇◇


 ☆ジョーカー


「ふんふん……集まってきたなぁ」


 ジョーカーは城の方を見ながらニコニコと笑う。そう、あれでいい。これが望んだ展開だ。


 人を殺せるだけ殺したい。それがジョーカーの願い。その為には、何をしたって構わないと、常に考えていた。


 だからこのマジカル☆ロワイアルに出れるとわかったとき、飛び上がるほど喜んだ。この後にまた展開はわかっていても、だ。


「さって……」


 ジョーカーは大きく伸びをする。さっさと終わらせていこうか。せっかくだから、相手の条件くらい飲んでやろうか?


 ワクワクを抑えきれないジョーカーはキャリーバックを転がしながら、歩き出した。小さくスキップしているのはきっと、見間違いじゃなかった。

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