4-11【ジョーカーを倒すための話し合いをしましょう】

 ☆ガードナー


 ブレイカーと二人で勝ちに行く。そう先ほど話し合って、決めた。その間もガードナーは、自分の話が憶測の域を超えているということは、重々承知していた。


 だから、この話をすんなりと信じてくれて、なおかつ二人で生き残ることに賛同してくれたブレイカーは頼もしく見えたが、少しだけ恐ろしく思えた。


「とりあえず……ジョーカーを倒すための作戦を考えないといけませんよね」

「あぁ……だが、運がいいのか悪いのか分からんが、僕らはジョーカーと直接対峙したことは一度たりともない。情報と呼べるものは 全て憶測だ」

「ですよね……兎に角、利用できるものは利用しましょう」


 ブレイカーがそう言ってにこりと笑う。その笑顔は、自分にしか向けられてないものだと思うと少しだけ嬉しかった。


しかしなぜ、ここまで彼女に心を許すことができるのだろう。ガードナーは産まれて……何年かは忘れたが、とにかく人に心を許すといったことはしたことない。


 なぜ心を許せるのか。今はそんなこと考える暇はない。兎に角、二人で生き残る道はジョーカーを殺すことしかないのだ。


「……兎に角、セイバー達に会いに行こう。おそらく僕ら二人じゃ……ジョーカーを倒すことはできない。それに利用できるものは利用しないといけないからな」

「セイバーさん達を利用するのです?」

「キミは人を睨んだらそれだけで刺し殺せるのかもな」

「……それってもしかして視野が狭すぎるってことですか?」

「よく理解できたな。その頭にはメロンパンが詰まってるわけではなさそうだ」


 そう言って動こうとした時、外から激しい音が聞こえてきた。何事かと思い急ぎ足で病院から出ると、入り口付近にはパペッターとセイバーがいた。


「……どうした?」


 もしかして話を聞かれていて、攻撃しにきたのか。そうと思ってしまい、あくまで冷静に。そしてあくまで慎重に声をかける。


 声をかけられたセイバーはなんというか迷ってるように見えた。しかし、パペッターが逆に一歩前に歩き、口を開けた。


「ジョーカーを倒すための話し合いをしましょう」

「……ほう。何か、勝算があるのか?」

「ええ。私たち四人だけじゃ負けるかもしれませんが……9対1なら、流石のジョーカーも負けると思いませんか?」

「つまり何か?キミは……他の生き残り全員に声をかける。そう思っているのか?」

「勿論です!」

「そういうことだ、ガードナー」


 なるほど確かに。その提案はガードナー達にとっては渡りに船でもある。了解と一言でそれにのってもいいか、いくつか問題がある。


 その1。これはいうわけにはいかないが……ガードナー達のような結論に至ったものが、後ろから闇討ちしてくる可能性もある。


魔法少女全員にあった訳ではない。もしかしたら、ここのメンツよりさらに上の魔法少女がいる可能性はある。


 そしてその2。ガードナーとブレイカー以外の魔法少女が、ジョーカーを殺す可能性が上がってしまう。これは一番避けないといけないことだ。


 その1の懸念は、はっきり言えば気をつけておけばいい。9人の監視の中、闇討ちを仕掛けてくるような存在はいない筈だし、もし殺されたとしても、メールでバレてしまう。


 故に気をつけないといけないのはその2だ。不慮の事故で、例えばセイバーがジョーカーを斬り殺すかもしれないし、パペッターがなんらかの方法でジョーカーを殺す……事はあり得ないが、万が一というのがある。


 兎に角今の時点でセイバーが殺す可能性があるのだ。可能ならこれ以上人を増やしたくない。


 しかし、増えたらその時の利点もある。それはジョーカーを倒す確率が単純に跳ね上がるということ。


 倒すことができるようになるということは大事なことなのだ。そもそもジョーカーを殺さないとここから出ることはできないのだから。


 ならば、パペッターの話になるもの一つの手か。そう思い考えている時、パペッターが遠慮がちに声をかけてきた。


「あのぉ、聞いてます?」

「……ふん。考え事をしていたまでだ。僕が人の話を聞き流すわけがない。だが、一つ聞かせろ。どうやって他の魔法少女を集める気だ?」

「はい。えっと……他の魔法少女を集める方法ですけど。一つ、考えがあります」


 とりあえず話だけでも聞くべきか。ガードナーはブレイカーに目だけでそう伝える。彼女もわかりましたと言いたげにコクリと頷いた。


(しかし……)


 パペッターを見る。彼女はここまで人と会話することが好きな人間だっただろうか。もっとおとなしいというか、そういうタイプに見えたが。


 何か心変わりでもあったのかもしれない。それならやはりランサーなのだろうか。しかし、彼女の影響力は大きいとは思えるが、ここまであるものなのだろうか。


(……気にしすぎ、か?)


 ガードナーはそう考えて無理やり気持ちを切り替える。そもそも、パペッターがもし何かしてきても彼女のスキルは使えないのだから、意味がない。


 無理やり切り替えても違和感は残るもの。ガードナーはため息をつきながらも、パペッター達の話に耳を傾け始めたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る