1-11【疲れた時、わからない時やることといえば一つデース!】
☆ブレイカー
「う、うぅん……」
痛む頭を抑えて、ブレイカーは立ち上がる。なにがあったかを冷静に思い出そうとして、そしてアッと声を上げた。
そうだ。ガードナーにムカついて、そして襲いかかってそれでそれで……
「目が覚めたか、低脳」
ムカつく声が聞こえた。そこを向くと、そこにはこちらを見るガードナーの姿があり、彼女は少し愉快そうな顔をしていた。
なにが面白いのかと書こうと思った矢先、なにか、少女の声が聞こえてきた。シンガーと名乗る少女が、なにか伝えているらしい。
戦いはやめようだとか、手を取り合おうだとか。そんな夢物語を彼女は語っていた。そして、そんな少女の結末はもちろん……
【がぁぁぁぁぁぁぁ!!】
「おやおや……どうだ?助けに行かないのか、ブレイカー」
「……助けたいです、けれど、もう間に合いませんから……」
「やけに冷たい人間だな。まぁ、うん。賢明な判断ではある」
その言葉の後、二人のスマホが同時になる。そしてそこにはメールが1通届いていて、シンガーの末路を理解する。
これで残り17人。早い所ジョーカーを仕留めないと、さらに被害が広がる。その被害の枠の中に自分は入りたくない。
「ふむ……」
ガードナーは何かを考えているようだ。さて、これからどうするか。ガードナーの実力は確かだが、彼女と共にいたらストレスで倒れてしまいそうだ。
とりあえず離れるか?そう思った時、ガートナーと目があった。やっべ。その言葉を思考するのと同時に、ガートナーは口を開けた。
「キミ。僕と同盟を組みたまえ」
「……拒否権は?」
ブレイカーは半分あきらめながら口を開ける。そして、その言葉を聞くと、ガードナーはふっと小さく鼻で笑い、口を開けた。
「ないな。喜ばしいことに」
◇◇◇◇◇
☆ガンナー
「くそっ……!!くそがっ……!!」
先程から地面に拳を打ちつけながら、後悔の言葉を並べているのは、自分の同盟相手、ギャンブラー。
少し話しただけでわかる。彼女は優しく、そして強い。あの瞬間、交渉を持ちかけてきた時点で、それはわかった。
だが、この空間じゃ、それはしてはいけないことだ。優しすぎる。そして強すぎる。その二つはやがて己を絞め殺すだろう。
「……ハァイ、ギャンブラー。後悔しても仕方ないデース。今はくよくよせずに、前に行きまショー?」
「わかってる……けど!……それをわかりたくないんだ……わかってくれ……」
そう言われて、無理に引きずることなんてできない。とりあえず落ち着いてもらうまで、待とうと考え、その場に座り込む。
そして手にある赤いサイコロをちらりと見る。先ほどスキルの話をしていた。そしてこれはギャンブラーのスキルであり、これは出た目が大きければ大きいほど対象の能力を上げるらしい。
もう一つ。黒いサイコロは逆の効果。つまり弱体化をかけるのだ。運が絡むスキルは、なるほどギャンブラーらしい。
ガンナーのスキルはペイント弾。当たればその人物がどこに隠れていようと見つけることができるというものだ。効果に多少制限はあるが、うまく使えば優位に立てるだろう。
「……ギャンブラー。少しいいですカー?」
「なんだ……!私を馬鹿にするのか……!?甘いと……!!そう言うつもりか……!!」
「ノンノン。いいですカー?疲れた時、わからない時やることといえば一つデース!温泉に行きまショー!」
「おん、せん……?だ、だが、私達は今、そんなことしてる暇は……!!」
「大丈夫デース!ささ、そうと決まればレッツゴー!デース!」
そう言ってガンナーはギャンブラーの手を引き歩き出す。はっきり言ってあんな辛気臭い顔を続けられるとこちらも迷惑なのだ。
だから、さっぱりしよう。この思いの中には、勿論自分が入りたいと言う気持ちもある。
暗い森の中に、ガンナーの歌声だけが辺りに響いた。ギャンブラーからの反応はなかったが、やがて後ろから自分で歩く音が聞こえた、ガンナーはゆっくり手を離したのだった。
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