第4話 新たなる出会い③
「ふむ……あの地団太……なかなかいいリズムを刻んでいるじゃないか。それに、力強さも情熱もある……。うん、悪くない」
驚いて振り返ると、そこにはアルベルトが感心した様子で立っていた。
「だ、団長!? どうしてここに?」
「ああ、僕もたまには、ラシェル君と同じように食堂でランチと洒落込んでみようかと思ったんだけどね」
そう言ってから、にこりと微笑んだ。
「でも、想定外の良い収穫がありそうだよ」
「え? それって、どういう……」
ラシェルが問いかけるよりも先に、アルベルトは相変わらず地団太を踏み続けている青年騎士に向かって歩いて行った。
そして――
「やあ、君。失礼ながら、騎士団をクビになったようだね」
無遠慮な声かけに、騎士は不機嫌な顔そのままに振り返った。
「ああ!? お前には関係ないだろうが!」
制服に縫い付けられた階級章を見るに、青年騎士はまだラシェルと同じ新米騎士のようだが、上位騎士であるアルベルトに対してもまったく物怖じしていない。
そんな様子にますます興味を持ったのか、アルベルトは楽し気にウインクしながら言った。
「今さっきまでは関係無かったけどね。これからはそうとも限らないよ。もし他に行く当てが無いようなら、我が騎士団に入らないかい?」
「……なんだと?」
先ほどまでの怒りを僅かに沈めて、怪訝そうな顔をした騎士に、アルベルトは言葉を続けた。
「我が『栄光ある女神に捧げる聖音騎士団』は新しい団員を探していてね。君のように面白い人材に興味が湧いて来たんだよ」
「……えいこうある……? なんだ、なげえ名前だな。お前はそこの団長なのか?」
「ああ、そうだよ。僕の名はアルベルト・レイターバーグ。君の名前を教えてもらってもいいかな?」
「……ザック・タンブロスだ」
相変わらず怪訝そうな表情ではあるが、そう名乗った青年騎士――ザックに、アルベルトは頷いた。
「ザック君。君さえよければ、歓迎するよ。ただし、ちょっとした『練習』にも付き合ってもらうことになるけどね」
「それはかまわねえけど……いいのか? 俺は今さっき、命令無視をして紅蓮騎士団を追い出されたばかりだぞ」
神妙な顔をしたザックに、アルベルトはふふと微笑んだ。
「僕は、君に命令して思い通りに動いてもらおうとは思っていないよ。むしろ、君が刻むリズムに、僕らが合わせようと考えているんだよ。そうして生まれる音楽もまた、独創的で情熱的なものになるにちがいない!」
ばっと両手を開いて天を仰ぎながら陶酔気味に語るアルベルトに、血気盛んなザックも唖然としていたが、やがて、ぎこちなく頷いた。
「……な、何の話をしてるのか知らねえが……このままどこの騎士団にも所属できなきゃ、くいっぱぐれるからな。入れてくれるなら断るつもりはないぜ」
「それは良かった! 歓迎するよ!」
顔を輝かせたアルベルトはくるりとラシェルの方を振り返った。
「そういうことだから、ラシェル君! 新人教育は君に任せたよ! 先輩としての初仕事、気合を入れて楽しんでくれたまえ!」
急に話を振られた上、突然の新人教育宣言に、ラシェルは一瞬事態を飲み込めず立ち尽くしていたが、
「え……ええええええ?」
暫くの後、思わずそう叫んでいた。
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