第15話 仲直り
温かくて、私をつつみこむようなこの感覚。いつまでもこのままでいたい。そう思っていた。だけどそうはいかなかった。呼吸の音がだんだん大きく聞こえてくる。ゆっくりと重い瞼を開けると見覚えのある、いつものわたしの部屋だった。(まだ数日しかたってないけど。)起き上がりはせずに呼吸を落ち着かせる。眠くなってまた寝てしまいそうだった。うとうとしていると頭上の方からドアがひらく音が聞こえた。こっちにやってくる。総司だとわかっていても睡魔にうち勝つことはできなかった。踏ん張って総司の顔を見るけど、瞼が重い。総司がそっと私の頭に手をのせて揺さぶる。私は小さく言葉にならない声を発してこたえる。
「大丈夫だ。まだ寝てていい。」
優しく小さな声でささやく。それを聞いて、私は再び安心して眠りについた。寝息を確認した総司は静かに部屋から出ていった。
結衣が眠っている間に幹部会議が行われた。議題は、明後日の作戦についてだ。約三日間眠っていた結衣に重役を任せていたが、その本人が現在もおやすみ中で作戦決行が困難であると判断した。話のなかでは大石の件も出てきたが、大石は無言を貫いていた。最終的に決まったのが、結衣が決行予定日までに復帰できるなら予定通り行い、もしできないなら、作戦を中止することになった。そして、作戦決行の条件の一つとして大石は結衣との仲を回復することも決まった。
翌日、結衣は起きた。総司に支えられて起き上がる。
「なんか変な感じがする。ふわふわって感じ。」
「四日間寝てて何も食べてないんだ。生きてるほうが不思議なくらいだ。」
「え、そうなの。じゃあ・・・明日が作戦の日?」
「そうだけど、結衣に無理させるわけにはいかない。だから、そのことは考えるな。」
私はうつむく。総司が私の頭に手を置く。そんなときに、部屋に大石が飛び込んできた。そして、勢いよく頭を下げる。
「申し訳なかった!」
そういったまま動かない。私は総司とアイコンタクトする。私は控えめで優しく答える。
「うん。私は大丈夫。だから私も作戦に参加させて下さい。」
それを聞いた大石はようやく顔をあげた。総司は顔をしかめる。
「結衣、それはだめだ。俺が許さない。」
「私は大丈夫って言ったもん。」
「総司、悪いが諦めてくれ。本人も参加したいっといってるんだ。初舞台を祝ってやれ。」
大石が私に加勢する。
「ほら、二人の副頭首が言ってるんだよ。」
「それでも頭首である俺が決める。」
「そんなこと言ってると、協会みたいになるよ。」
総司の言葉が詰まる。それを見た大石はとどめをさす。
「総司の負けだな。協会のやつらと同じにされてはたまったもんじゃない。」
「わかったよ。作戦は予定通り行う。伝令、頼んだぞ。」
「ああ、それでこそ我らの頭首だ。」
そうして大石は部屋から出ていった。総司は私を見て、
「絶対に死ぬなよ。これ以上大切なものをやつらに奪われたくはない。・・・おかゆ作ってくる。」
そう言って総司も部屋を出ていった。
いよいよ明日、作戦決行である。私は総司のために総司を守るために戦うことを強く再び覚悟した。
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