第14話 悪意の正義

「ワシがこの村の長じゃ、お主ら何者だ?」


初老の男性が杖を片手に開いた門から身を出した。

すぐ後ろには先程の見張りが槍を手にいつでも村長の盾になれる位置取りをしていた。


「お前が村長か?俺達は旅の悪魔払いだ!この村に悪魔が居て居座っているのを退治しに来た!」

「そのなりでか?」


村長が聞き返すのも無理はない、どう見ても堅気には見えない格好をしているのだから。


「おいおい、人を見掛けで判断するのは良くないぜ?こう見えても正義の使者なんだぜ?なぁ皆?」

「ちげぇねぇ!ギャハハハハハハ」


まさに見えてる地雷と言わんばかりにそれが嘘だと丸分かりなのだが相手を刺激しすぎるのは危険と判断した。


「来ていただいたのは非常にありがたいのですが我々の内部の事は我々で解決したいと思いますので…」

「おい!お前…悪霊にとりつかれてるな?やれ!」


頭の言葉に残る19人が一斉に動き村長に向かって駆け出した!


「村長!こっち…」


見張りのその言葉は最後まで出なかった。

村長を門の中へ引き込もうと体を出したと同時に眉間に短剣が突き刺さったのだ。

門を塞ぐことで盗賊の侵入を防げる形だったのだが見張りの死体が挟まり門が閉められなくなる。


「なっ?!」


見張りが倒れた事に驚いた村長はそのまま盗賊達に押さえ込まれ村は盗賊の侵入を許してしまった…






「さぁ、それではこの村の悪魔を炙り出す!村の皆さん御協力をお願いするぜ」


立てられた木材に張り付けにされた村長の下に火がつけられる。

それを悲痛な顔で見詰める集められた村人の前には石ころが大量に用意されていた。


「これから村長さんの体にとりついた悪霊を追い出す儀式を開始する!村人の中に根源となる悪魔が居る筈だ!悪魔なら同族を守るため村長さんの中に居る悪霊を守るために邪魔をする筈だから自分は違うと言うものは村長に目の前の石を投げつけろ!」


ざわざわと騒がしくなる村人だったが少し離れた場所で炙り出された悪魔を滅するために弓矢を5人の奴隷が構えていた。


「さぁ!やれ!」

「い、嫌だ!そんな無茶苦茶な…」


最初の犠牲者は一人の男性だった。

否定の言葉を吐いて石に手を伸ばさなかった為に一斉に放たれた矢に射抜かれてのだ。


「ひっ…ひぁぁ!!がっ!!!」


次の被害者は逃げようとした老婆であった。

一瞬にして多数の矢に射抜かれた男性の死に様を見て恐怖に狩られ逃げ出した所を背中から投擲されたナイフが刺さり倒れた。


「何度も言うが悪魔を炙り出すためだ!俺達もこんな事はしたくないんで大人しく言うことを聞いてくれないか?」


嬉しそうにそう告げる盗賊の頭の笑顔に村民は恐怖した。

そして、恐る恐る村長に謝りながら次の女性が石を投げ付けた。

それを皮切りに次々と石は投げられていく。


「早くしてやらないと村長さん死んじまうぜ!ひゃははははは」


盗賊の一人がその光景に告げる。

村長の体から悪霊を追い出すって話は何処へ行ったのか、そんな思いが喉まで出かかったが誰もが村長がその身を呈して村人を守っているのを理解して飲み込んだ。

しかし…


「無理だ…俺には村長に石なんて投げられない…」

「ほぅ、じゃあお前が悪魔だと認めるんだな?」


村の中でも曲がった事が大嫌いなツムギと呼ばれる男性だった。

特に村長には小さな頃から様々な世話になっていた彼は手にした石を地面に落とし盗賊の頭へ宣言した。


「そうだ!俺が悪魔でいい!だから俺が死んだら村から出ていってくれ!」

「ふはははは!見上げた心意気だ!良いぜ、その約束神に誓ってやろう!やれっ!」


放たれた矢がツムギの体を貫く、歯を食い縛って呻き声一つ上げずに倒れ始めるツムギに盗賊の頭は告げた。


「お前が死んで村から他の悪魔も全て殺したら約束通り出ていってやるよ!」

「っ?!」


倒れながらその言葉に目を見開き血の涙を流すツムギ。

そこへ声が聞こえた。


「う、うぁぁぁぁぁ!!!」


誰もがその声に反応し見てしまった。

運良く村から出ていたロッツォの姿がそこに在り村人達は直ぐに視線を反らすが既に遅く…


「なんだ、良い値で売れそうなガキが居るじゃねぇか…」


嬉しそうに売ると言った盗賊の頭は自らが言い放った設定を無視して部下に告げる。


「行けっ生け捕りだ。」

「へぃっ!」


嬉しそうに返事をした長髪の盗賊は奴隷を3人連れてロッツォの居た方向へ駆け出していくのであった。

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