不思議な事はなにもない

SIN

プロローグ

 小学校の正門を潜った先にある二宮金次郎像は、少し前に撤去される事になっていた。

 薪を背負った姿が虐待を思わせるとか、ながら歩きを助長しているからだとか、色んな意見が学校に寄せられたためだ。

 しかし、今日も二宮金次郎像はそこにあり、登校してくる児童を優しげに見つめている。

 児童達は噂した。

 真夜中になると二宮金次郎像が校舎内を歩き回る。と、

 真夜中になると二宮金次郎像が体育館でバスケをする。と、

 イチョウの広場にあるイチョウの木を見上げる。と、

 薪の数が変わっている。と、

 日によって前に出ている足が違う。と、

 日によって本のページ数が違っている。と、

 像の中に心臓が入っている。

 と。

 二宮金次郎七不思議である。

 まぁ、不思議でも怪談でもなんでもなくて事実なんだけど、直接は見た事がない筈なのに、噂話ってどうしてこうも核心を突くんだろう?

 そっちのがよっぽど不思議だ。

 俺達は普通にしているだけ。

 不思議な事はなにもない。

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