真智にだけ視える妹

母親は病院に救急搬送された。


そしてすぐに緊急手術が行われた。


適切な手術によって母親は面会できるまで回復した。

しかし……。


真智は母親の言動の些細な変化に違和感を感じ、薄々見抜いていた。

お母さんが自分やお父さんに心配をかけまいと気丈に振る舞い笑ったりしていることを。


真智は母親との面会を終えて病室から出ると、

わざと病室のすぐ外から母親の様子を伺う。


やはり、真智の感は当たっていた。

母親は下を向き静かに涙を流していたのだった。


真智は家に帰った後、父親から母親が流産したことを知らされた。

父親は自分を責めた。

しかし、真智だけは涙を流さない。


「真智、お前は強くなったな。

でもな……、こういうときくらい、

父さんの前で強がらず泣いたっていいんだぞ 」


「ううん、あたし大丈夫だよ」


大丈夫だよ

大丈夫だよ

大丈夫だよ



それからも、真智は母親が退院するまで毎日欠かさずお見舞いに行った。

ある日、真智は母親に訊かれた。

「ねえ、真智?」


「なに、お母さん?」


「お父さんから……妹のことは聞いた?」


「うん。聞いたよ。

だけどね、あたしにはお父さんの言うことには納得できないんだ」


「そうよね。

私たち家族みんなであれだけ楽しみにしていたのに、本当に残念よね」


「え?

ちょっと待ってお母さん!

何言ってるの?」


「どうしたのよ、真智?

急に不思議そうな顔して」


「ねえ、お母さん大丈夫?

最近立て続けにいろいろなことがあったから疲れているんじゃない?」


「真智ありがとう。

私は大丈夫よ。

でも、どうして私のことそんなに心配するの?」



「大丈夫じゃない!

お母さん、全然大丈夫じゃないよ!」


「ちょっと、どうしたのよ、真智」


「だって今……、

あたし可織抱かせてもらってるじゃん。

たぶんお母さんから離れたくないからだと思うけど、可織は今大きな声で泣いてるよね?

それなのにお母さん、全然気にならないの?


「え?」


———————————————————————

【登場人物】

真智まち

真智まちの両親






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