真智の帰還
『ピコーン、ピコーン、ピピピー!!』
「薄井うすい博士ー!!」
「はーい!
って、あれ?」
「じゃなかった、下水博士ー!!
大至急実験室に戻って来てください!」
「今急いで戻ってるよ!
すぐ着くから」
「博士、遅えースよ!」
「これだけは言わせてくれ!
キミってさ、容赦ないまでに徹底的に僕をディスってくるよねー!?
どうしてー?」
「谷先生に言われてるっスよ。
月水博士は変態で女性に罵られると喜ぶ。
だから、出世の為に気に入られたかったら徹底的に罵るようにって」
「えみたーん!
最悪だよ~!
だけど……」
「だけど……、なんっスか?」
「そんなツンデレなえみたん、
僕は嫌いじゃないんだよ、好きだ」
「月水博士?」
「なんだい?
電話戦士(ぱしり)。
そんな、まるで汚い物でもみるような目で僕の顔をみて?」
「この場にいない谷先生の代わって、
ここは
チン de
「ひど~い!
ママにも叱られたこと無いのにー!」
「ねえ博士?
ふと今思ったんスけど……」
「キミがふと思うなんて、正直悪い予感しかしないんだが……」
「え~と、そのハゲ散らかした残り少ない貴重な髪!」
「僕の髪が何だよ~!?」
「博士の性格と一緒で今の髪型って潔く無いと思うんスよ。
だから、ここは試しに一本残らずむしっちゃってみてもいいっスか?」
「ダメダメダメー!!
髪は僕の命だから」
「そんなこと言わずにー!!」
「キャァァ~!!
僕の貞操奪わないでー」
「ゴホン!
おふざけはこの辺にして、
博士もモニターをみて欲しいっス!」
「どれどれ?
信、信じられない……!!」
「そうっスよね!?」
消える寸前だった真智の微かな脳波。
その反応が突然、今度は安定に向かいだしたのだ。
真智は意識を取り戻そうとしていた。
◇…………?◇
「ん!?」
◇……わかる?◇
「誰?
誰かアタシに話かけてる?」
◇真智ちゃん、わかるっスか?◇
「あなたは確か……、
谷先生の研究室のパソコンの画面に映ってた人ですか?」
「そうっスよ」
「それに……、谷先生のボーイフレンドの一休さんまで!!」
「僕は一休じゃなーい!!
月水休一だ!
キミ、この前もそうやって僕のこと呼び間違ったよね!?
まあ、僕がえみたんのボーイフレンドと言ってくれたところは否定しないけど……」
「ちょっと博士!
そこは谷先生の為に否定しとかなきゃダメっスよー!!?」
「ところで、月水博士も助手の人もアメリカじゃなかったんですか?」
「そうなんだ。
当初らアメリカからネット回線を通じて君たちを見張る予定だったんだ。
だけどいろいろイレギュラーが起きてね……。
君が装置を使っている間に飛行機で帰国してやって来たんだ」
「イレギュラーですか!?」
「そう。
詳しい内容については、後でえみたん達が目を覚ましてからキミにも必ず説明する。
だから、今は待って欲しい」
「わかりました」
「ねえ、真智ちゃん?」
「え?」
その声は月水博士の助手の女性からだった。
「お姉さんから1つだけ質問させてもらっていいっスか?」
「え……は、はい」
「装置にかかっている間、どんな体験をしたか覚えてるっスか?」
「あの…………」
「あの?」
・・・・・・
『ツンツン』
「キャ!!
なんだ、ただの変態マザコンハゲ眼鏡ッスか?」
「電話戦士(ぱしり)カモーン♪」
「へ~いっス」
博士と助手の女性は一旦、
あたしから距離をとると小声で何かを話はじめた。
あたしの耳には二人の会話の内容がかすかに入ってくる。
だけど、あたしはあえて聴こえていないフリをすることにした。
「博士、どうしたッスか?」
「真智ちゃんは思い出したくない思い出とか嫌な夢をみていたかもしれない。
ちょっと気遣ってあげようよ」
「確かに、そうっスね」
「あのっ!」
「あっ、真智ちゃんを一人にして博士と会話をはじめてごめんっス。
それと、もう1つ言わせて欲しいっス!!」
「え、はい」
「
ホント申し訳ないっス!!」
「いえいえ、
あたしさっきの質問のことは気にはなりませんでしたし。
だから、全然大丈夫です」
「真智ちゃんは優しいっスね。
それでも、話したく無いことだったら話さなくていいっスからね」
「はい、ありがとうございます!
むしろ、あたしは、あたしの体験を信じてくれそうな人、つまり博士と助手のお姉さんにもちゃんと体験した内容を話して、
相談にのって貰いたいです」
「
「はい。相談です。
実はあたし……、
はっきりとは覚えていないんですが
死んだ妹と夢の中で会ってきた気がするんです」
———————————————————————
【登場人物】
•
•
•電話戦士(パシリ)
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