意識の量子テレポーテーション
大正時代。
あたしの幼馴染にイワンって男の娘がいたんだけど、イワンが転校する少し前……。
部活の合宿で、あたし達は谷先生同伴で長野県まで来ていた。
「ねえ、※愛理栖? タイムカプセルを埋める場所、
本当にここで合ってる?」
あたし達は夜遅く、長野県にある絹糸紡績工場の敷地内に無断で侵入し、ちょうちんの灯りを照らしながらポイントを探っていた。
「早くしないと、警備の人がいたら見つかっちゃうよ!」
「空間と時間の座標から、この場所で間違いないね」
「ちょっとみて、愛理栖!
ここ、固くってスコップじゃ歯が立たないよ!」
「困ったな〜。コンクリートだったなんて予想して無かったよ」
「それで、愛理栖どうする?
あたし達このままここにいてもらちがあかないよね?」
「仕方ない、みんな少し離れて」
愛理栖はそう言ってから、まずタイムカプセルを埋めるポイントの上に置いた。
それから目を閉じてタイムカプセルを指差したかと思うと
何言ってるかわからないような変な呪文を唱え始めた。
すると次の瞬間、
タイムカプセルを中心に空間が渦を巻きながら
グニャグニャに混ざりだした。
あたしは愛理栖の力を一度見せてもらってるけど、他の部員はみんなキツネにつままれたようにポカーンと目を丸くしていた。
そして、まるで大きな地震でも起きたかのように空間ごと揺れ出し立っていられない状態になった。
だけど、しばらく我慢しているとそれはいつの間にか治まっていた。
「みんな……、大丈夫だった?」
「う、うん……」」」
みんなはあまりの出来事に呆然。
「ところで愛理栖。タイムカプセルは?」
「コンクリートの下だよ」
「え?本当に?」
「そう」
「コンクリートの下に入ったっていうのはわかる。
でもさ、ここって未来には公園になるんでしょ?
公園を作る時掘り起こされたり、
よけい地下深くに潜り込んだりしないの?」
みんなの代わりにあたしが愛理栖に訊ねた。
「私もそこは心配だったから、
タイムカプセルの外缶に細工をしたんだ。
指定時間の前後48時間までは量子的に情報化させてる」
「量子的に情報化ってそれ、どういうこと!?」
「霧状の確率的な状態。つまり、位置が形『として』まだ固定されていない確率分布状態のこと」
「愛理栖ごめん、あたしさっぱりわかんない」
「真智ごめん。説明するのは時間がかかりそうだから。
それよりみんな!
役目も済んだし、宿舎まで戻ろうよ?」
「了解〜!」」」
「・・・・・・」
あたしだけは素直に返事ができなかった。
理系女の知的好奇心から、仕組みを理解したかったから。
「ねえ、真智も早くここ出よ?」
「あたしはちょっと調べた後に行きたいから、愛理栖はみんなと先に出てて」
「ちょうちんの灯りだけじゃ足下暗いよ。
それに、工場の警備員に見つかってしまうかもしれないし……」
「ごめん……、愛理栖。
ほんの少し調べたら、すぐに追いかけるから」
「わかったよ真智。
だけど、気をつけて戻ってきてね」
「愛理栖ありがとう」
愛理栖達が行った後、あたしは自分の気が済む
までタイムカプセルが埋められているらしい地面をくまなく調べてみた。
「みつからないな」
往生際の悪いあたしも流石に諦め、
公園に背を向け帰ろうとした
ちょうどそのときだった。
『アタシヲタスケテ……』
「え? 今の声は愛理栖?
いいや、違うな。
あたしの声……?」
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【登場人物】
•
•四葉
•谷先生
•イワン
•愛理栖(リトル愛理栖)
第2章で真智達のところにあらわれた
次元を操つる不思議な能力を持った水色の髪の少女。
御社様が神格化した羽●の声に似ていたり似ていなかったりするらしい。
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※リトル愛理栖
5次元少女。
真智の世界では、愛理栖は小学校高学年くらいの幼い姿で登場する。
5次限人になった後(覚醒後)の愛理栖は、
自分の体であるブレーン宇宙内のあらゆる生き物の知性をその時エネルギー消費する銀河の量に応じて自由に利用して考える事ができる。
だから、たまに一般人の大人でも理解が難しい話をすることがある。
※タイトルの量子テレポーテーションについて。
アタシヲタスケテの情報はどこで作られたもの?
時間軸や空間軸の違う臨死体験中の真智や谷先生によって作られたもの?
否。
じゃあ、イワンが転校する前に工場に忍び込んだときに作られたもの?
御意。
じゃあ、どうやって?
それは、次回に続きます。
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