野原に広がる名も分からない小さな花たちのように。

ソラ

第1章 春が過ぎようとしている、曖昧なこの季節には。

第1話  ……まったく男ってやつは……

「ねえ、今日は一緒に帰れるの?」


 すずは上目づかいで、けんの方の正面に立ち、問いかけると、


「いや、今日は珍しく部活」


 と、そっけない返事。


 鈴菜は少し時間をおいて、


「ふ~ん……判りましたっと。今日はお一人で帰りますわ」


 そう言うと、両手を頭の後ろに組んで、くるっと健吾に対して背を向いた。


「ゴメン!」


 健吾はそう言うと両手を合わせて頭を下げる。


 鈴菜は、『仕方がないなあ……』となかば諦めモードで、


「結構一人で帰るのって寂しんだからね」


 と小声でつぶやく。


 健吾は、よく聞こえなかったみたいで、


『え、何々??』


 というような素振り。


 後ろにいる健吾のそんな仕草を首を傾けて見ていた鈴菜は、右手で顔を半分覆い、項垂うなだれると、


『……全く男ってやつは……』


 とあきれるばかり。


 いつか健吾から、


『一緒に帰りたいな』


なんて一言を、むしり取りたい気分の鈴菜だった。



***To be continued*** 

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野原に広がる名も分からない小さな花たちのように。 ソラ @ho-kumann

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