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「あら、こんな素敵な色のカクテルがあるんですね。黒いカクテルは初めて見ました」

「ブラックレインと言うカクテルです。オパール・ネラ・ブラック・サンブーカと言う黒いリキュールとシャンパンで作ります。まるでミクリさんの為にあるかのようなリキュールでしょう?」

 黒色のリキュールなんて。

「素敵なお酒ですね」

「まだまだバリエーションがありますから、いつでもお作りしますよ」

 ミクリさんは美しくはない微笑みを返して、グラスを傾ける。黙っていると細いシャンパングラスに指を添える姿は様になっているのに。ミクリさんは微笑むのが驚くほど下手くそだ。

「美味しいです」

 だから感想を言う時もほとんど表情が無に近い。うん、もう慣れたから大丈夫。本当に美味しいって思ってくれているんだし。それよりも・・・

「あぁ、そうですね。そう言えば、ミケさんの件、上手くことは運んでいるようですね」

「え、分かるんですか」

「えぇ、まぁ」

 ミクリさんはあっさりと答えると、ブラックレインを一口。何と言うこともなく、平然と答える。

「絡まっていたものが解けたと言いましょうか。ミケさんの纏っている空気も穏やかでしたし」

 な、なるほど? でもまぁ、ミケの恋愛が上手く行っているだろうことは本当だし、以前恋愛相談に乗ってもらったミクリさんが言うのだからきっとあの二人は上手く行っているのだろう。まぁ俺もついこの間二人のデート現場(デートと決まった訳じゃないけど)を目撃していたし。

「ミケさんが変わっている証拠ですね」

「それなら、良かった」

 ミケが自分の思う道に進めているのなら。まぁ元々心配なんてしていなかったけど。ただ腐れ縁の仲だから気になっていただけで、なんて。

「では一杯、私からプレゼントさせてください」

「いいんですか?」

「ささやかなお礼、ということで」

 別にミケの為とかじゃないけど。

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