葉桜にぼくは

水原緋色

第1話

 今年も桜が散った。

 青々とした葉が顔を覗かせる

 百年も前からこの地に咲いていたこの桜は寿命だそうだ。


 そして彼女は不安げだった。


「痛いのは平気よ。今までだって色んなところを切られたんだから。でも……死ぬっていうのがわからないの」


 そんなことかと笑えば不機嫌に顔を背ける。


「怖がる必要はないよ。死ぬっていうのは終わりじゃないんだから。ねぇ、枝をを一本もらっていってもいいかな? 」

「なによ、それ……。いいわ。もう花は終わっちゃってるけど飾っていて」



 持ち帰った枝は僕の家の庭であの桜のようにきれいに育った。


「だから言っただろう? 怖がる必要はないって」

「ふふふ、本当ね」


 彼女が笑い、今年は一段と綺麗な桜が咲いた。


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葉桜にぼくは 水原緋色 @hiro_mizuhara

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