溺れる恋
野口マッハ剛(ごう)
純子さんの魔法の言葉
貴女は魔女
言葉の魔法が使える
傷付いた心に唱える
「さあ、人生を楽しんでいらっしゃい」
貴女はいっぱい人々を救ってきた
でもね、貴女の魔力がなくなったみたい
貴女に不幸が訪れる
貴女はいっぱい傷付いた
泣いた、来る日も来る日も
みんなが貴女を見捨てる
貴女は純子さんって名前がある
ある日、純子さんは一人の青年に出会う
魔女だった純子さんはもう魔力がない
青年が通り過ぎようとした
「待って」純子さんはそう言った
青年は立ち止まった
「君も独りなの?」純子さんの言葉
「そうだよ」青年は冷たく言った
純子さんはこう言った
「私は魔法が使えたの」
青年は涙を流した
「もうその魔法は使えない」青年はそう言った
純子さんと青年は前世で夫婦であった
しかし、純子さんが早くに一度この世を去っていた
青年も魔法使いであった
でも、二人の魔法は色あせていた
「私は君のことが本当に好きだった」純子さんの涙
青年は泣きながら去った
純子さんは呪文を唱えた
けれども、二人の恋が燃えることはもうなかった
呪文は届かなかった
のちに青年はこう書き残していた
「お許しください。貴女の魔法がとけただけなのです。それは優しい世界の魔法でした。魔力のない貴女から僕は逃げたのです。それはすごく罪なのです。貴女を守ってあげられなかった。」
青年は魔法使い狩りにあって死んだ
純子さんは魔力がなかったために無事だった
運命は今日もぐるぐるとまわる
二人の恋をなかったもののようにして
〈純子さん、生きてください
天国で待っていますから〉
青年の声が聞こえた気がした
溺れる恋 野口マッハ剛(ごう) @nogutigo
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