一休参

‪「このはし、わたるべからず」‬


‪立札の表示を無視して、腐りかけていた橋を渡り、彼が命を落として、もう二年になる。‬


‪とんちが得意で有名だった彼の功績を称えて、橋が元々あった場所には石碑が置かれている。‬


‪旅人はそこを通りがかると、石に腰を下ろして一休みするのが慣例である。‬


‪「一休、お前の事を今も皆さん、覚えてくれているぞ。ありがたい事じゃのぉ。」‬


‪墓碑に参った彼のお師匠さんが、そう呟いて空を見上げると、大きな虹の橋が架かっていた。‬


「さてさて、この橋をお主はどうやって渡るのかのぉ。」


微笑むお師匠さんの坊主頭に、一滴の天気雨がぽつりと降り注いだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る