とある乙女のバレンタインデー

 二月十四日。お菓子と共に好きな人に想いを伝える日。


 彼女は焦っていた。

 夜通しで作ってはいたが、なかなか焼き上がらないのだ。


(急がなきゃ。彼が待ってるのに…)


 ようやく出来あがった頃には、ラッピングする時間も残されていなかった。

 彼の元へ急いで向かう。


「ハァ…ハァ……」

 駆け寄る彼女を、彼は安心した顔で見つめていた。いよいよ想いと共に彼にぶつける。顔を。


『アンパンマン。新しい顔よ!』

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