お腹が空いた羊





 へいげんのまんなかで


 いっぴきのヒツジがねころがり


 そらにうかぶ雲をながめていた


 うまそうだなぁ


 ヒツジはそらをとび


 雲のはしにかぶりついた


 いままであじわったことのないあじ


 ヒツジは雲をたべつづけた


 




 せかいから雲がなくなった


 雨がふらなくなってしまった


 川はなくなり


 のみみずがなくなった


 ひとびとはゆめをみるようになった


 いつか雨はふる






 雲をたべつづけているヒツジは


 そらにうかぶおいしそうなものを

 

 みつけた

 

 それはひとびとのゆめだった


 ゆめをたべられたひとびとは


 かがやきをうしなった






 雲がせかいをおおった


 雨がふり ひとびとはいえのそとへでた


 やっとふったか


 それだけいって


 いえのなかへもどってしまった


 みんなゆめをたべられて


 うれしいきもちになれなかった



 



 それからもヒツジは


 ひとびとのゆめをたべつづけた


 せかいからかがやきがきえた






 ゆめをたべつくしたヒツジは


 ゆめをさがしてとんでいた


 おなかがすいたなぁ


 すいへいせんのむこうがわに


 ひかりかがやくゆめをみつけた 

 

 あんなおいしそうなゆめははじめてだ


 ヒツジはいそいでゆめにむかってとんだ






 ヒツジがゆめにかぶりつこうとしたとき


 うしろから棒でなぐられた


 ヒツジはたおれた


 ゆめのぬしであるしょうねんがいった


 おまえか みんなのゆめをたべつくしたのは


 しょうねんは棒でヒツジをたたきころした


 ヒツジの腹からゆめがちった


 



 ひとびとにゆめがもどり


 せかいはあかるくなった


 そしてしんだヒツジは雲になり


 ひとびとのゆめをいつまでもみまもった






 

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