4-3 洞窟探検
日が替わり洞窟へと向かう。
俺達の仕事は洞窟内外の安全の確保となる。確保だけすれば後は他の人達の仕事だ。
「そう言えば昨日聞いたエレメントってどんなのなんだ?魔力が固まった物が魔物化してたりするのか?」
「そうね大体そんな感じ。魔力は生命のエネルギーに近いものがあるから、それの塊が暴れたりするのよ。アンタの所って魔力が無いのによく解ったわね」
前を歩いていっているリーナに聞くと、振り返って聞き返してきた。
「そんな感じの敵が出てくる話は結構あるしな」
「ふーん、魔法も魔物も結構すんなり受け入れてるし、その辺もあるのよね?」
「まぁそうだな」
俺の答えに「なんだか不思議な事もあるものね」と前に向き直った。
言われて見ると確かに不思議な気もするが、大量にある物語の中の一分野に偶々被ってるといった具合なだけだろう。
「エレメントって剣で切ったりは出来ないのかな?」
前を歩いているレオが隣に居るリーナに尋ねた。
「前までだとアタシと、一応リョウじゃないと対処出来なかっただろうけど、今はエイミーも居るから大丈夫。よね?」
振り向いて俺の横を歩いているエイミーに聞いた。
「そうですね、私が加護をかけたら問題なく切れるようになるので思いっきりお願いします。私も今回は他にもサポート出来ると思いますので」
ちょっと何時もよりもテンションが高いエイミーが答える。今回の件は流石に気合が入るものだろう。
「エイミーって回復とか加護以外にってどんな事が出来るんだ?」
「相手の位置を感知したり、動きを止めたりですね。後は今回は攻撃としても結構頑張れると思います」
「昨日一緒に魔物退治に行った時は凄かったよ、こう光の鎖がばーっと出て魔物を捕まえてさ」
手をわーっとさせながらレオが説明していく。
うーん、やっぱりレオって何と言うか……
「ほんとアンタの説明って解り難いわよね」
言い難い事をずばっとリーナが言ってのける。
「えっ!?そうかな……」
「そうよ、リョウへの指導も横から見てたけど、身振り手振りと擬音ばっかりで解り難い。リョウは遠慮して言わないんだろうけど、こういうのは言ってやったほうが相手の為でもあるからね」
「そうなの……?」
落ち込んだ表情をこっちに向けられると割りと困る。
「いや、ほら近接戦となると、考えるより感じるんだ。的な部分はあるだろうしさ。それに俺は言うほど悪くないと思ってるしさ」
何とかフォローしようとするも、それを聞いて益々落ち込んでしまっている。
「教える側って大変なんだね」
「いやいや、トレーニングのメニューとか考えてくれてるし、それに無理しないよう気を配ってくれてるし、俺はこれからもレオに教わろうと思ってるからよ」
「期待に沿えるよう頑張るよ……」
話をしていると目的の洞窟の近くへと着いた。
遠くからでも魔物が居るのが見えが、何故か魔物達は洞窟内には入ろうとせず外をうろうろとしている。
エイミーが大まかな魔物の位置を感知し、それをリーナが空から確認していった。
「よし、それじゃあ正面突破と行きましょうか」
そう言うとリーナの手に魔方陣が展開され雷鳴が轟き、洞窟入り口にたむろしていた魔物達を全て焼き払った。
「うわぁ……少しは習った後に改めて見ると、リーナの魔法ってやっぱやべぇな」
「ふふん、褒めるならもっと素直に褒めても良いのよ。さて、洞窟の中を探索して行きましょうか」
地図を見ながら洞窟内を探索していく。
洞窟内は壁のあちこちにエーテルが作られており、溜まっている魔力で仄かに洞窟を照らしている。
隊列はレオが先頭で、リーナとエイミーを間に挟み、俺が最後尾だ。俺とレオの剣には前もってエイミーによる加護を付与してもらっている。
「洞窟内には魔物は居ないみたいですね」
少し割れ目になっている道を「よっ」とエイミーがジャンプしていく。
「エレメントがそれだけ中で暴れてるのかもね。よっと、外の魔物もどうしようかと悩んでたみたいだし。エレメントが居そうな場所は解る?」
「この先に気配があるので、そろそろ注意した方が良いかもしれません」
進んでいくとエイミーが「来ます」と声を上げた。
洞窟の奥が光り、炎が迫り来る。それをレオとリーナが防壁を張り防いだ。
ゆらりと小さな人の様な見た目をした火のエレメントが姿を現す。
何かをしようと手を構えた瞬間、宙から伸びた光の鎖がその手を捕えた。
「光りの矢を!」
エイミーがそう叫ぶと、エイミーが掲げた手から光線が放たれエレメントを貫いた。
何かが弾ける様な音と共にエレメントが崩れ落ちていく。
「へー、やるじゃない」
「小さなエレメントでしたから。でも、まだ来ますから注意してください」
その言葉通り次々とエレメント達が襲い掛かってきた。
レオが前に突撃し、リーナとエイミーがそれを援護していく。
これは俺が前に出たら逆に迷惑になりそうだな。俺も援護に参加して行こう。
小さな火の玉を群がろうとするエレメント達への牽制として放ちながら、攻撃にも参加しようと考え、メモを取り出し大技の魔法陣を確認する。
しかし魔方陣を作り上げている間にレオが最後の敵を切り伏せてしまっていた。
「あっ・・・もう終わりか」
出来上がった魔方陣が集中力の途切れと共に霧散していく。
「言ったでしょ。アンタは今は火力よりも手数で勝負しなさいって」
「そうは言われても、やっぱり」
「い~い?アンタにはちゃんと戦い方を教えてる、だから教え通りにやりなさい。今のアンタの武器は鍛えて早く出せるようになった魔法と、魔力による防御、後はレオから教えてもらった剣ね。はやる気持ちも解るけど、アタシ達が教えた武器をちゃんと活用しなさい」
「ああ、解ってるよ。ちゃんとする」
ズイズイと詰め寄られ返事をするも、少し自信が無い声が出てしまう
「そうよ、ちゃんとしてもらわないと。アタシ達の背中は任せてるんだから」
「背中を任せるって、俺で大丈夫なのか?」
背中を任せるという言葉は嬉しくもあるが不安だった。果たして自分なんかに勤まるのかと。
「大丈夫も何も足手まといなら宿に置いて行くわよ。自信が無いのはこの際良いけど、自分の教わった事は信じなさい」
「……そうだな、ちょっと魔法使えるようになって変に構えてたのかもな。うっし!気合入り直せた」
役に立とうと不相応な強さを無意識に求めてしまっていた。
俺の役目は二人に教わった事を両方使いこなす事なのだから、俺に出来ることをやっていこう。
その後も何度かエレメントとの戦闘を繰り返していくと、開けた場所へと出た。
エーテルの結晶が幾つも出来上がっており、それらが煌々と輝く幻想的な空間となっている。
「エーテルって、こんなに綺麗な物なんですね」
その光景を見てエイミーが見とれてしまっている。俺も思わず「おーっ」と歓声声を上げてしまった。
こんな、まさにファンタジー世界だと言うような光景を本当に見ることが出来るなんて。
「これだけ表面に結晶として出ているなら埋まってるのも相当な物になりそうね」
リーナがコツコツとエーテルを叩きながら辺りを調べていく。
「これでもまだ一部なんだ」
レオもそれにつられてエーテルへと手を伸ばす。
「そうよ、でもこれを採掘するのはアタシ達の仕事じゃないし、アタシ達はやる事をやりましょう」
リーナの言葉に皆が頷き最深部へと向かう。
そこには巨人の様なエレメントが待ち受けていた。
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