3-2 呪われた村と銀色のシスター
目の前に夜の村がある。
そこだけ夜のまま切り取られたかのように、村を中心に半円上の暗闇が広がっている。
「さて問題、リョウはこれをなんだと思う?」
突然の問題を出された。
「え、なんだと言われてもな」
今までこんな光景は一度も見たことは無かった。
「時間が勿体無いからからヒント。呪われた場所の特徴はなんだった?」
ヒントの内容を必死に思い出す。確か買ってもらった本の中に記述があった気がする。
「えっと確か……そうだ、空間内の魔力が不安定になるとか何とかで、その中が暗くなったりとか異常が起こる見たいな事が書いてあったような」
「はい正解。話に聞いて何となく予感はしてたけど本当に呪いが起きてるなんてね」
話を何故かキョトンとした様子でレオが聞いている。それにリーナが気が付いた。
「もしかしてアンタ解ってない?」
「多分まだその辺は授業で習ってないと思う」
「あーそうね、アンタはそうかもね」
「どうしたんだ?」
頭を抱えてしまっているリーナに尋ねる。
「リョウには今後の事も含めて色々と教えてるし、アンタ自身も本を読んで勉強してるけど、レオはその辺はまだ勉強してなかったから」
「ごめん、勉強不足で」
申し訳なさそうにレオが頭を下げた。
「はいはい、良いの良いの。じゃあ上から様子見ながら説明するから二人とも頭出して……っと」
リーナが言葉を途中で止めてこちらを向ける。
「そうだ今回はアンタにやってもらおうかしら」
「え!?俺はまだ魔法どころか魔力の制御も出来ないけど」
「アタシがアンタの代わりに魔法を使うから、アンタは何か上からの偵察に向きそうな物を考えて作ってみなさい。それなら出来るはずだから」
「うーん、とりあえずやってみる」
レオと一緒に頭に手を置かれ、先程言われた偵察向きの物を考える。
上空から偵察……そうなると何だろうか……
浮かんだイメージをリーナが拾い上げ形にする。
「なんだか変なのが出来たわね」
出来上がったのは少し不恰好なヘリコプターだった。
「俺の居た世界にある空を飛ぶ機械だな」
「成る程、イメージの形はちょっとあやふやだけど飛ばしやすくて良いわね」
そう言ってリーナが思念体を飛ばしていく。
「ヘリの動かし方って解るのか?」
「別にどの形でも飛ばすイメージさえあれば飛んでいくから、物によって変わりは無いわ。動かし易さは作った際の飛んでいくイメージが強いほど動かし易いけど。さて上から様子を見ていくわよ」
上空へ意識が飛び村の様子が見えてきた。
「これ以上近づくと消えちゃうからこの辺で様子を見ながら簡単な説明しましょうか。さっきも言ったけど呪いが発動している空間では魔力が不安定になって弱体化するのと、空間内の人や動物に体調不良や火傷の様な症状が出るのと、アンデッドが出るのが特徴ね」
「アンデッド!?死人が歩いたりするのか?」
「原理としては死んだ人に残っている魔力が反応するとか何とか、なんにせよ出るそうよ」
うーん、呪いがどうのと聞いた時に何となく予想はしていたが当たっては欲しくなったな。
「あっ教会がちゃんと残ってるじゃない!」
柔らかな光に包まれている教会が確かに見える。それと同時に光の外で何やら蠢く影が見えるのも気になるが
「無事な人が居るって事?」
「そうなるわね、正直生存者は絶望的だと思ってたけど誰か生きている人が残ってるし、状況の把握の為にも教会の中に居る人と会ってみましょう」
「どうやって中に入るんだよ?」
俺の疑問にリーナがぐっと手を握って答える。
「気合で突撃」
村の周りを回って教会へと一番近い距離に荷物を置き陣取る。
そこでタオルを顔に巻いてマスク代わりにしたり、リーナに防護をかけてもらったりと対策を立てていく。
「いい?防護をかけてるけど空間内に入ったら勝手に無くなっていっちゃうし、マスクも無いよりマシ程度のものでしかないから、空間内に入ったら教会に真っ直ぐダッシュよ」
「そこで待ち構えてるアンデッド達はどうすんだ?」
空間内ギリギリでアンデッドが4人、こちらを向いて唸り声を上げている。
「来た分は僕が切っていくよ。あんまり相手したくないけど・・・」
そりゃそうだ。
「俺も何か手伝える事ってないか?」
「今回はアンタもアタシもやれる事は少ないからレオに遅れないようダッシュするぐらいね。後はレイスも現状対抗策が無いから無視で。相手の攻撃方法は即効性があるものじゃないから」
そう言いながらもリーナは魔方陣を展開した。
「それでも正面のぐらいは倒せるでしょ。3で撃つから、そのまま走りこむわよ」
1、2、3!との掛け声と共に雷がアンデッドを貫き焼き尽くした。
同時に三人とも全力で駆け出していく。
空間内に入るも説明の様な苦痛感は無かった。対策が上手く機能してるのか?
走って行くと先にアンデッドが立ちふさがっている。
レオがそれの頭と腕を両断し走りぬけようとするが、頭の無いアンデッドが再生していく腕で掴みかかる。
掴まれたレオは驚くも、咄嗟に腰の鞘を外し殴り飛ばした。
転がっていくアンデッドを見て切るより殴るほうが良いと判断し、剣を鞘に収め群がるアンデッドを薙ぎ倒していく。
後もう少し。
教会を包む結界が目前に来ている。
横から建物を突き抜け、半透明の人の影の様な物が現れた。レイスだ。
影がリーナへと襲い掛かり取り憑いた。
リーナの膝がガクッ落ちそうになるも踏ん張り走り、飛び込む様に結界内に入った。
結界の光に触れた瞬間取り憑いていたレイスが霧散していく。
レオとリーナは激しく咳き込み、肌も赤く火傷しているような見た目をしている。
リーナが魔法で治すも、普段よりも効きが悪いのか時間がかかっている。
それを俺は、何故か無事な俺は横から見ていた。
どうしてだ?走る際の条件は殆ど同じだったはずだ。
リーナがレイスの攻撃を受けていたが、外傷として見える部分は別の物のはずだ。
なのにどうして俺には火傷がない?二人は咳き込んでいるものの、俺は少し煙を吸い込んだような違和感がある程度だ。
それらを考えていると教会のドアが開き、黒い服を身に纏った銀髪の少女が出てきた。
生存者だと喜ぶも束の間、疲れきった目と手に握ったナイフに気が付く。
「待て、俺達はこの村を助けに来たんだ!怪しい者じゃない!」
先手を取って叫ぶがナイフを震わせる少女には届いていない。
「どうしてこの村を襲うんですか、なんで皆を、この村が何をしたって言うんですか!?」
何度も助けに来たのだと叫ぶが彼女の心には届かず、ナイフを構え向かってくる。
「リョウ!」
叫ぶレオを右手で静止し、顔に巻いていたタオルを左手に持ちナイフを受け止める。
手の平が切れる感覚がしたが、離れようとするナイフを掴み少女の体を引き寄せ抱きしめた。
「助けに来た、もう大丈夫だ」
その言葉に少女の体が揺れ、動きが止まる。
「大丈夫だ、大丈夫」
そう言い続けながら背中を優しく叩く。
「本当に、助けが……」
か細い声と共に少女の体から力が無くなった。どうやら気絶してしまったようだ。
その瞬間結界が揺れ、縮み始めた。
「マズイ、中に入るわよ」
気絶した少女を連れ教会内へと避難する。
教会の中は倒れた村人で溢れていた。
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