第6歩目!最後の一人はゲーム廃人!?
四月下旬、ゴールデンウィークも差し迫った頃、オタク同好会はいつもの風景が流れていた。
部室というものは使い勝手が良く、授業の空きコマだったり、放課後であったり、まさに巣と化している。
「いやー、今日も遥ちゃんは可愛いなぁ♡
「やめてくださいよぉ。凛子さん嫌いですぅ!」
「えぇぇー!」
可愛がりも程々にだ。四六時中遥に引っ付く凛子に鬱陶しさを感じる遥。
「それはお前が悪い。ところで拓海と遥は授業はしっかり出ているのか?」
裕美は部室でも課されたレポートに取り組む、学生の鏡だ。
「はい、まだ欠席はないです。こないだ遅刻しそうになったら遥にこっぴどく叱られて。」
「当たり前でしょ!私1人は寂しいもん...」
相変わらず遥の人見知りは治る兆しは無く、拓海と授業を常に受けている事から学部内ではカップルという認識らしい。
凛子からじっとりとした目で牽制されているような気がした拓海だが、気付かないふりをした。
「そうか、それは何よりだ。くれぐれも馬鹿なゲーム廃人にはなるなよ?」
きょとんした顔の拓海と遥を見て裕美は思い出したように付け加えた。
「そうか、お前たちはまだあいつを知らないのか。」
「よーっし!それじゃあ今からみんなでやっさんの家に突入だネ☆キラッ☆」
机に突っ伏して寝ていた光国が突然立ち上がり、突拍子の無い提案を始める。
「行ってらっしゃーい、私は行かないから。」
「無論、私もだ。」
凛子と裕美は冷たく光国の提案を断った。
「えー、釣れないなぁ。仕方ないネ、新入生たち、行くよ!キラッ☆」
ー
渋々ながら、拓海と遥は同行する事になり、大学近くの学生マンションを訪れた。
二人は恐る恐る光国の後ろを歩き、208号室の前に辿り着いた。
光国はインターホンを押し、しばらく経っても返事が無かったため、徐に鍵穴をいじり始め、「やっさーん!!入るよォ!!」と勢いよく扉を開いた。当然二人は慌てて止めようとしたが扉は既に開いた。
「やっさーん!久々だネ☆」
ワンルームの間取りに並べられた膨大な電子機器の数々、しかし散らかっているという訳ではなく、しっかり秩序は守られているようだ。
「おう、光国か。ヘッドホンしてて気付かなかったわ。」
「ほら、新入生だよ!拓海っちと遥っち。」
無精髭を蓄えた青年が立ち上がり、3人と対面する。鍵に関しての言及が無かったことに拓海と遥は驚いた。
「山城拓海です。よろしくお願いします。」
「木津遥です。よろしくお願いします。」
対面の男は少し頭を掻きながら、面倒臭そうに自己紹介をした。
「あー、
康宏は光国に対して訝しげな顔をして言った。
「んな事より何しにきたんだ?あの乳女は来てないよな。」
「おい、ゲーム廃人。歯食いしばれ♡」
噂話をしていると本人がいるという事は珍しくない事で、例に漏れず、凛子は指を鳴らしながら部屋に入ってきていた。
ー
「ったく、なんだよもう。何しにきたんだ?」
紅葉マークのついた頬を擦りながら康宏が問いかける。
「ズバリ!ゴールデンウィーク合宿☆の計画するからやっさんも明日から来てネ☆」
「は?乳女どういう事だよ?」
「知らないわよ!合宿なんて聞いてないわよ!!」
「二人とも、可愛い後輩二人が入ってきたのに歓迎会すらしてないんだよぉ。それに副長は知ってたよネ!?」
「ああ。お前達はオタク同好会の掲示板をまともに見てないだろう。同好会としての活動報告を上に挙げねばならないと私は一度説明している。」
「堅物...お前もいたのかよ。」
裕美も気になって跡を追いかけていた、そして合宿計画についての話に驚いた康宏と凛子だったが、予め話としては出来ていたらしい。
ちなみに拓海と遥は完全に蚊帳の外にいた。
「とりあえず俺は行かないぜ。ゴールデンウィークはスマホゲーのイベントがあるからな。」
断る康宏の耳元で光国が優しく囁く。
「やっさーん☆貸し1の返済だよ。」
「ぐっ、分かった。仕方ねぇな、行くよ。」
どんな手を使ったんだろうと拓海と遥は目を合わせたが、これはどうやら光国と康宏の秘密協定だ。
「よしっ、じゃあ改めてオタク同好会メンバー全員集合だね☆キラッ☆あれっみんな置いてかないでぇ!」
「阿呆らしい、乳女、堅物。部室戻るぞ、お前ら俺の私物捨ててないだろうな。」
「ああ。あのガラクタならとうに焼却したぞ。」
「可愛くないものは部室にいらない♡」
「遥、合宿って何するんだろうね?」
「さぁ、それよりこのアニメなんだけどね...」
はしゃぐ光国を尻目にオタク同好会のメンバー達は既に部室へと戻って行った。
ー
場面が変わって一ノ瀬大学ふれあい広場。
百合と沙羅は講義をサボり、1軍グループで漫談していた。
「百合!もうすぐGWじゃん!?合コン行くよね!」
「あっ行くいく!勿論。」
(また、合コン...)
相変わらず大学生活を謳歌している百合だったが、この生活にどこか息苦しさを感じ始めていた。
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