第2話 初戦闘


さてどうした物か。


良太ことメルは思考を巡らせ今後の事をストレージから取り出したハンバーグ弁当を食べながら考える。


ゲーム同様、熱々のままの取り出せた事にも驚いたが、味も抜群に上手いことに歓喜した。


ストレージの中には料理一覧もあり、やりこみのおかげか全て満タンの99を所持し、大量の料理達がある。


これもゲームの中で各国食材集めのイベントがあったお陰だろう。暫く食に困る事はない。


それはさて置き、問題なのはここが何処かという事だ。


自慢ではないが、この世界が自分のしていたゲームの世界なら地形すら覚えている程のやり込み度合いであった為、見れば分かる。


だが、どうも地形に関しては見覚えがない様に感じた。


自分の状態は確かにゲーム其の物だが、この世界が必ずしもゲームの世界とは限らない。


(考えても仕方ない。調べて見るか。【#地図探索__サーチマップ__#】)


全てのジョブレベルをカンストさせたメルにとって、使えぬ魔法は無い。


メルを中心として、波紋が広がり半径10キロメートル内のマップが目の前にパネルとして現れる。


目を通して見ると、やはり知らぬ土地の様だった。


だがこの捜索の魔法の効果はそのままで、所々に赤い光りが写しだされる。


これは魔物を示す光りだ。赤は魔物、人は黄色く光る。


そして良く良く見ると、集落らしき場所を発見したメルだが、その集落のあちら此方に赤い光が蠢き、徐々に黄色の光が消失していく。


この集落は魔物の襲撃にあっている様だ。


(ふむ。ここにいても仕方ないし、自分がどれだけ動けるかもわからんしな。行ってみるか。)


メルは最後の一口を口に放り込むと、魔剣ガルガラをストレージにしまい込み、ゴミもしまいこんだ。


(ん?待てよ。この服装だと目立つかな?念のため服装を村人風に変えておこう。)


メルはストレージからゲーム初期にユニットが着ていた布の服を取り出し、着替えを済ませるとすぐにその場を立った。


〇〇〇〇


集落の場所は4キロほど離れた場所にあったがメルにとっては然程の距離でも無く、軽く走っただけの4分で到着した。


だが現状を見るなり、何故軽く走ってしまったのかと後悔させる様な光景が目の前に広がっていた。


人型でイノシシの顔を持つ巨体の魔物。


恐らくオークが次々と集落地を壊しては火を立ち上げ、女は犯され、男は次々と斬られ刺し殺されていく。


正に地獄絵図とはこの事だろう。


メルはその光景に吐き気をきたし、膝をつき嘔吐した。


吐ききった後、不意に後ろから声がかかる。


「おい!何してる!?こんな所にいたら危ないぞ!早くこっちへこい!」


メルが振り返ると戦士風なオトコがメルに手を差し伸ばしていた。そしてその後ろには同じく戦士風な男と魔法使いと僧侶の格好をした女性2人がいた。


年齢は大体20代ぐらいだろうか?


「ブモォォォ!!」


急な雄叫びが聞こえたかと思うと、遠方から矢が要られメルと戦士風のオトコの間の地に突き刺さった。


そこにいた皆は飛んできた方向へ視線を向けると、遠方からオークが数体此方に向かってくる。


そしてその真ん中には一際目立つ様に武装を施し髷のように髪を縛った赤いオークがいた。


それを見た冒険者達は顔を青くし驚愕する。


「…オークジェネラル。」


(ジェネラルって事はアレが親玉か。)


お腹の中の物は全て吐ききっていたメルは少し落ち着いていた。


口を汚いが袖で拭い、スクッと立ち上がると、急にザッと先程の戦士風の男がオークの方に体を向けたまま俺の前に立った。


「み、…皆んな逃げろ。俺が時間をかせく!」


戦士風の男は勢いよく腰の剣を抜き取り構えるが、身体と声は恐怖し震えていた。


「ラックス!お前カッコつけてんじゃねぇぞ!」


もう1人の戦士も剣を抜き取りラックスとやらの隣に立ち並んだ。それを見たラックスはフッと表情を緩めた。


「ちょっとバカじゃないの!?こんな所でカッコつけてないで早く逃げるわよ!」


「そうよ!早く!」


その行動に僧侶と魔法使いは納得いかず、反発するが、戦士の男2人は背を向けたまま、剣を掲げる。


「サラ。シズネ。男には守らなきゃならない物があるんだ。」


「わかんないよ!そんな事!」


魔法使いは涙目に叫ぶ。


「さぁ、時間がない!リーダーとしての命令だ!早くその子供を連れて行ってくれ!」


「ラックス!!」


僧侶が涙目になりながらラックスの背に抱きついた。


「ラックス。絶対生きて帰って来て。」


「…サラ」


ラックスはサラの手を握り振り返る。


そして口付けを交わそうとした矢先にメルが目の前の2人の間にグっと割り込み、前に躍り出る。


その行動に皆唖然とした表情を見せる。


そして更にメルは軽く肩を回し首をコキコキと鳴らし、両手をブラブラとさせ準備運動を素早く済ませる。


その様子に皆が疑問を抱くのは当然で、この発言が出た事は何ら不思議ではないだろう。


「な、何を?」


「できるかどうかは兎も角。負ける気は不思議としないんだよな。」


メルの発言に皆唖然と立ち尽くすが、メルは気にせず次の行動を起こす。


片手で顔を覆い、目を閉じる。


【俺の魔眼よ、今再び漆黒の翼と共に我に力を示せ!!開!眼!!!】


メルの詠唱で背中から大きな漆黒の翼が生えだし、ブワァ!っと辺りに風を巻き散らしフワっと羽を羽ばたかせ宙に浮き上がる。


それと同時に目を見開けば、メルの瞳は宝石の様な緋色に移り変わっていた。


(うん。やっぱり負ける気はしないな。)


冒険者達は何が一体どうなってこの状況なのか、言葉も出せず、ただただ口をパクパクとさせている。


メルはそれには目もくれず、漆黒の翼の効果で魔眼になっているメルの目には至る所の魔物が手に取るように分かる。


そして自分の頭上に光の玉を計32個を浮かび上がらせた。


これはこの集落に今いるオークの数だ。


「【#槍光雨__ホーリーレイン__#】」


キュュウ!パシュウ!!と音を響かせ頭上の光の玉が四方八方に矢の如く放たれた。


そして冒険者達が次に見たものは次々とオークがその光槍に貫かれ倒れこんでいく光景だった。


だが、ここはやはりジェネラル。一撃では仕留めきれなかったのだろう。


身体に光槍が突き刺さったまま、メルの前へと飛び上がった。


だがそれも呆気なく、メルはストレージから魔剣ガルガラを取り出し剣でジェネラルの首をザン!!と切り落とした。


ゲームでこそ、色々と魔物を切り裂いてきたが、実際にするのとでは大きな違いがある。


生き物を殺した。


普段から何かを食べるには殺生は付き物だが普通に日本で暮らしていては、スーパーに出されるのはもう事が済んだ後の物ばかりな為、その現実に触れることはない。


だから偽善かもしれないが後味は余り良い物では無かった。


この世界に何故自分は来たのか?


この世界にこの先もずっといるのだろうか?


いるのなら、こういう事がまた起きてまた殺めてしまうのだろうか?


慣れるのか?


メルの頭の中で色んな事が入り組んでいき、疲れきらか意識がフッと消え、それと同時に翼も光の散りと消え地に落ちた。









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