第7話「賭(カケ)か影(カゲ)か。」
作戦会議。
相手を自分の望んでいる方向にもっていったり、事をうまく成し遂げたりするために弄ろうする策。
しかし、作戦とは試合や戦争、または種々の競技などに使われる。
「やっぱり作戦じゃなくて策略とかの方がカッコよくね?」
「計略もあるだろ。」
「謀略の方が俺は好きだがやはり作戦だろ。」
そもそもどうしてこんな話になったのか。
時間は10分前に遡る。
「さて作戦会議だ。どうやってこれから生き抜くか。最終的にどうするか。それが問題だな。」
金田は腕を組んでイスに座り込んでそう言い放った。
「つまりあの感染者から如何に逃げて感染せず、安全なところへ逃げ込む。かつ半永久的に暮らせる、のがゴールってことだよね?太一さん?」
山中も目標を具体化してあげて確認をしていく。
「そういえばこれって生き抜いていく計画を建てるんですよね。」
「え?まぁ、そうだな。それが?」
金田は首をかしげて古場を見る。
「なら作戦というより策略、じゃないですか?」
古場のその言葉を聞いて金田は固まる。
「・・・・」
「え?何ですか?」
「亮って時々さ、アホだよな。」
金田の顔は固まった表情から呆れた表情へと変わっていく。
「確かに時々天然というか。バカみたいなことまじめに考えるよな。」
山中も金田に続いて声を上げた、が。
「やっぱり作戦じゃなくて策略とかの方がカッコよくね?」
・・・・・・・・・・・・・
約五分にわたる不毛な議論。それに終止符を打ったのは金田。
「もういいよ!なんでも!早く方針決めなきゃどうにもなんないでしょーがー!」
もう耐えられないと言わんばかりに立ち上がって声を上げた。
その声に二人は驚いて口に人差し指を当てて「しーっ」と言った。
「あ、すまん。いや。俺悪く無くね?お前らがくだらない事話始めるから、、、。」
肩を落としてため息をついた金田は腰を下ろした。
「じゃあ作戦会議(仮)でいいよとりあえず。今は進めるのが先決だ。」
二人とも何故か仕方ないといった顔で頷く。
「でだ。まずは直近の問題。まぁ今日明日食料が尽きるってことはないだろう。だけどそれが無くなってから動き出すとどうなるかわかるか?」
山中に目線を投げる。
「、、奪い合いかな?」
金田は満足そうにうなずく。
「その通り。遭難事故や命がかかったサバイバルでは時間が経過してから食料と水がどれだけ大事が気づくことになったりする。その時に気づけなかったものはずる賢い奴と力のあるやつに必ず奪われ一番先に死ぬ。」
「なるほど。じゃあこの付近の人がそれに気づいてインフラの完全停止前に先んじて動いてきたときに俺たちが動いても遅いってことか。」
「そうだ。まずはしばらく暮らせるほどの水と食料の確保。これが次の判断の正常化を促す。」
古場はそこで口を挟む。
「次の判断って?」
「基本的には正確な情報把握から滞在か移動のどちらかの選択だな。これは今の段階を終えてからだ。まずは手分けしてやるぞ。悠介は水道が出るうちに風呂やバケツ、ごみ袋でもいい。とりあえず水を可能な限り確保しまくれ。早ければ今日明日で水道電気ガスが止まるかもしれないからな。あ、あと完全停止したら元栓とか閉めとけよ。安全が火事でおじゃんは勘弁だからな。」
山中に告げてから金田は続ける。
「俺と亮でコンビニで保存のきく食料を確保だ。そうだな、明日の昼前にしよう。」
手短に話を切ると金田はふらりと立ち上がる。
古場には金田が立ち上がってから数秒間右手が震えているように見えた。
「珍しいですね。怖い、て訳でもないでしょうに。」
「、、あぁ。」
金田はため息だけついて二階へと向かった。
金田が二回の空き部屋に入ったことを確認してから古場は山中に言った。
「大丈夫かな金田さん。」
「ん?何が?あぁ、時々起こるアレか?」
二人は既に何回か金田の様子がおかしい時があったことに気づいていた。
「去年の春辺りだっけ。金田さんが頭に包帯巻いて入院から帰ってきた次の週くらいだったよな。」
山中は思い出すように言った。
一年半前、金田が謎の大けがを負って入院したことがあった。
その怪我について古場は深くは聞かなかったが仕事の関係だとは予想していた。
大して変わった様子もなくいつも通り話していたがその翌週、
金田、古場、山中の三人で飲み会をしたときに金田の様子がおかしくなった。
急に右手と足が痙攣し、話したくても言葉が出てないような様子だった。
その光景は余りにもいようではあったが本人は「疲れただけだ」としか言わなかった。
「あれなんかの病気か?時々あの症状出てるみたいだし。」
山中も心配そうに二階への階段を見つめた。
古場は何も言わずただ黙って金田の座っていたイスを見つめるばかりだった。
「がっ、、あぐっ、、。」
その頃金田は部屋の中の布団の中でひどい頭痛に襲われていた。
額には脂汗が滲み、目を開いたり閉じたりしながらのたうち回っていた。
「(なんだこれ、、!いったいなんだ頭全体が色んな方向から殴られてるみたいだ。)」
その時に金田の右腕右足の感覚が消えた。
正確にはしびれている感覚が上からか覆いかぶさっているようにも思われていた。
15分もすると頭に集まっていた血液が全身に引いていく感覚と共に痛みも引いていく。
「はぁ、、はぁ、、、。一体何なんだこりゃ。」
金田は布団から起き上がって右手を開いて再び強く握りしめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます