14

柊 由香

第1話

「自分は14という数字に呪われている。」


 僕がそう思い始めたのは、もう何年も昔のこと。大好きだった母親が1月14日、僕が14歳の誕生日を迎えた矢先、住んでいたマンションの屋上から飛び降り自殺をしたのだ。もちろん、即死。

 遺書なんてものはどこにもなく、ただ、カレンダーの僕の誕生日の所に小さく「ごめんね。」と書かれていた。

 だけど、これだけで僕が14に呪われているなんて思わない。母親が自殺して3ヶ月がたった頃、父親が14歳の女の子(僕と同年齢の子だ)に売春を持ちかけ、更にはその子に暴力を奮ったとして逮捕されたのだ。普段から真面目な父だったはずなのに、何故か僕は女の子の14歳というところを見ただけで、「あぁ、また14か」と妙に納得をしてしまったのを覚えている。

 それからというもの、僕は遠い親戚から援助を受ける形で一人暮らしをしている。もちろん、自炊もしているし、中学を卒業したら自分でアルバイトをして稼ぐつもりだ。だけど、ここでも僕は14に呪われる。毎月14日に親戚が援助を送ってくれるのだが、15万入金されるはすが、何故か14万しかいつも入っていないのだ。何度確認しても、親戚は15万送っていると言い、僕が引き出す前に引き出された形跡もない。けれど、何故か14万なのだ。怖くなった僕は親戚に頼みこんで入金ではなく、現金をそのまま封筒に入れて郵便で送って欲しいとお願いをした。だが、やはり金額は14のままだったのだ。この時、はじめて僕は何かがおかしい、僕は14という数字に呪われているのではないかと思い始めたのだ。

 だが、そうおもいはじめてからというもの何も起きず、7年が経って僕は21歳になっていた。

 結局、親戚から送られ続けた支援の金額は15になることなく、14万のまま僕が高校2年生になるまで続いた。最も、金額に文句を付けている訳では無いが、薄気味悪かったというのが正直なところだ。何故、親戚は僕に15万送っていると嘘をついていたのだろうか、何故、14なんていう中途半端な数字なのだろうか。様々な憶測が頭を過ぎるが、どれも僕自身が納得できる答えは見つからず、ただ、僕か、はたまた僕の周りかが14に取り憑かれているということが確かなのは理解出来たのである。

 けれど、時間は色々なことを忘れさせ、記憶を曖昧にしていく。僕は7年の歳月の中で、自分が14に呪われているということさえも忘れかけていたし、気づけば何かしらで選択する番号は14にしていた。周りから見れば、ただ14という数字が好きな奴くらいにしか思われてないだろうと思う。それくらい僕は自分の周りに14という数字があることに疑問を抱かなくなっていたのだ。ただただ平和な何も起きない日常を過ごし、誰かと普通に結婚をして、家庭を持ち、70歳か80歳で死ぬんだろうなというビジョンさえ見えていた。

 だが、平和はある日突然にして崩れ落ちる。そして僕が14に呪われているということを思い出さなければ行けなくなるのだ。

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