OL Bの場合

@yuukaizumi40

第1話

証拠か・・・・・被害者が加害者を告発するためには、証拠がいる。証拠しか、ものを言わない。被害妄想や、言いがかりと、区別するためだ。確か、あるバーに行ったとき、確かに薬をもられ、確かに拘束されたのに、つぎの日あれは建国記念日に、裁判所で無料法律相談会をしていて、警察ではなく、そのつぎの段階の裁判所へ相談に行ったわたしに、太った弁護士が言った言葉は、『裁判は証拠です』それだけだった。バッチが胸にキラーんと、光っていて、わたしの話にはうわの空だった。公権力を信じないことにした私はバーにもどり、わたしを拘束したバーの人に恋をした・・・。彼の手はふるえていた。最後に入れるピューレを、グラスにスプーンでそそぐとき・・。そんな彼の手に恋をしたかもしれない。そんなこと、わたしなら朝飯まえなのに、そんなことに恐がるその手に。     法律を犯すことは、たいへんなリスクだ。たいへんなリスクを負ってまで、自分に拘束される価値など、見当たらなかった。どこにも。あの頃は。              証拠が、いる。自分を無罪にするためには証拠がいる。自分と神様だけが、知る身の潔白を。                  自分の友人が、すべて自分を有罪にするための資料を逆にそろえている。       それでも、確信があった。自分の無罪を証明しよう。集中しよう。他人に証明するにはまず、自分に証明しよう。         留置場のなかは、ここちよかった。長年勤めたオフィスより、静かで集中できた。

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