絢音ちゃんの家に行ってみる

5月某日。俺は絢音ちゃんに呼び出された。俺はバイトが終わるとすぐ美波と美咲と別れ、目的地へと向かった。向かった先は絢音ちゃんの自宅があるというマンションだ。駅からもさほど遠くなく、下宿先からはすぐだ。そして、そのマンションの最上階に絢音ちゃんが住んでいる。




夕方、俺はマンションに着くと、絢音ちゃんの住む部屋にインターホンを鳴らした。応答してくれたのは絢音ちゃんだった。嬉しそうだ。そして、エレベーターに登り、最上階である絢音ちゃんの自宅のインターホンを鳴らす。そして絢音ちゃんが玄関で出迎えてくれた。絢音ちゃんは高校の制服を着ていた。可愛い。




「広いな・・・」




絢音ちゃんの家に入った途端、俺はそう小言を漏らした。なんせ1フロア丸々だ。普通のマンションの2倍か3倍の広さはある。しかも最上階だから眺めもいい。俺は「ところで、親御さんは?」とお菓子とジュースを用意していた絢音ちゃんに尋ねた。絢音ちゃんは「共働きだから、今日は夜まで帰ってこないかも」と言い、俺にお菓子とジュースを差し出してくれた。


それからほどなくして、絢音ちゃんの妹さんが帰ってきた。




「始めまして。石見琴音いわみことねです。姉がお世話になっています」




琴音ちゃんは早速、俺に挨拶をしてきた。礼儀正しそうで何よりだ。姉妹ということもあってか、外見が絢音ちゃんによく似ている。




「琴音ちゃんって中学生だっけ?」


「はい。中1です」


「帰り遅かったけど、部活やってるの?」


「料理部です。今日は休みでしたが」




俺はチラッと時計を確認する。まだ6時を回ったばかり。そして俺は絢音ちゃんにあることを訪ねた。




「そういえば、絢音ちゃんってお兄さんとお姉さんもいたよな」


「うん。お兄ちゃんは今年大学卒業したし、お姉ちゃんも大学3年生。私と違って、お互い忙しいから・・・」


「そうなんだ。話訪ねて悪かったな」


「ううん。大丈夫だよ」




俺と絢音ちゃんがこう話しているうちに、お姉さんが帰ってきた。大学の講義があったのか、おしゃれな春らしい私服だった。そして姉妹ということもあってか、外見が絢音ちゃんと琴音ちゃんによく似ている。




石見歳音いわみとしねです。絢音がお世話になっています」




歳音さんは早速、俺に挨拶をしてきた。俺は歳音さんに「3人とも綺麗ですね」と言う。すると歳音さんは「沖山くんもかっこいいじゃないですか。絢音の彼氏がこういう素直な人で私は安心しましたよ」と言ってきた。俺は「そんな・・・」と言ったし、絢音ちゃんは「お姉ちゃん、彼氏じゃないよ!」と歳音さんに突っ込んできたが。そして夜になり、絢音ちゃんの両親とお兄さんが同時に戻ってきた。




「君が沖山くんだね。石見敏夫いわみとしおです。絢音から色々話は聞いてるよ」


石見華絵いわみはなえです。娘がお世話になっています」


石見敏樹いわみとしきです。妹から色々話は聞いてます」




3人がそれぞれ俺に挨拶をしてきた。確か絢音ちゃんのお父さんは代議士だっけ。政治家一家でお祖父さんと曾祖父さんは総理大臣もやっていたと聞いたな。お父さんはたまにテレビで見るけど、さすがに本物はオーラがある。絢音ちゃんの父親だからということもありそうだが。


俺は「もう時間ですし、そろそろ帰ります」と言ったが、敏夫さんは「そんなこと言わず、ここで夕飯を食べなさい」と言ってきたので、俺は石見家で夕飯を食べることになった。




「ところで、絢音とはどこまでいったんだ?AかBかCか?」




食事中、敏夫さんが俺にこんな話を吹っかけた。俺はむせた。絢音ちゃんも「お父さん!」と声を出す。そして、「まだ球場で知り合っただけだよ・・・」と口を漏らした。それに対して敏夫さんは、




「絢音、沖山くんのことが好きなんだろ?」




衝撃の一言を言ってきた!これにはさすがの俺も動揺する。心拍数が凄いことになっている。絢音ちゃんも顔を真っ赤だ。そして、




「だからまだ好きだなんて感情は・・・」




絢音ちゃんは敏夫さんにこう小言を漏らしていた。絢音ちゃんはかなり動揺をしている。そして俺は軽く凹む。絢音ちゃんが言った言葉に敏夫さんは、




「まあ、沖山くんならいつ絢音を嫁に出しても俺は構わないけどな。沖山くんも絢音を泣かすんじゃないぞ」




と俺にこう言い放った。そして食事を済ませた俺は家族に一礼をし、絢音ちゃんの家を後にしたのだった。

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