第08話 衛星惑星など     

ごきげんよう、崔浩さいこうである。


ここまでに紹介した天の地図に、

では、どのような現象が

生じたのであろうか。


これを、中国史のいわゆる公式本、

二十四史のひとつ「宋書」より

一通り引き出してみた。


抽出対象期間は 222-426 年。


作者が宋の武帝・劉裕りゅうゆう死亡後に

余りにも興味が無いため

不思議な期間となっておるが、

まあ、気にせぬように。


ただし、それでも二百年近くの

国家運営にまつわる天体記録である。

無謬性……は、期待するものでもないが、

「国家の命運を占う天体観測」

の性格についてであれば、

サンプルとして、それなりに有用であろう。

(万全、と言う気はないぞ)



さて、「宋書」によれば、

以下のような天体/現象による

干渉があった、と言う。


※( )内の数字は、

 サンプリング期間中の登場回数である。



月(232)

 言うまでもない。

 太陽を除けば、最強の星。

 よって登場回数も最強である。



辰星しんせい(8)

 水星である。

 地球より見れば太陽の周りを

 ちまちま回る星であるから、

 むしろ観測されていることに

 驚くレベルである。


太白たいはく(170)

 金星である。

 太陽の明るさ故に、昼間には見えず、

 光度が弱まる明け暮れにのみ見える星。

 お陰で占いのネタとして重宝されている。


熒惑けいわく(118)

 火星である。赤い。説明不要。

 赤いせいで、凶兆の代表格

 呼ばわりをされている。


歲星さいせい(37)

 木星である。国家の占いにおいては、

 割と存在感が薄い。

 市井の占いではどうだったのであろうな。


鎮星ちんせい(33)

 土星である。填星てんせいともいう。

 案外木星と採用数が近く、驚きである。


 天王星海王星がノータイムで

 いない子扱いなのは、流石であるな。

 まあ、肉眼観測で見つけられる輩など

 化け物以外の何者でもないが。


 そして、二百年間の運用を見れば、

 水星、土星の類は省略すると良い。

 中国では五行思想に繋がるため

 どうしても「五星揃うこと」が

 重要であるが、諸氏の世界にて

 わざわざそこを付き合うこともあるまい。



大流星(7)

 枉矢おうしと呼ばれることもある。

 流星の内、特に際立ったもの。


流星(7)

 奔星と呼ばれることもある。

「被る」事に対する極端な忌避感を

 抱く中国史的世界では、

 ルールに縛られずに被りまくる

 流星なぞ、悪魔以外の

 何物でもなかったのであろう。


星散(1)

 流星群、であろうか。

上記を踏まえれば、

「悪魔の群れ」ともなるな。



彗星(60)

 星孛せいう、長星、蓬星ほうせい、妖星とも。

 尻尾のある星。流星以上の悪魔として

 認識されざるを得まい。

 確かにこんなものが星宮に侵入されれば、

 最悪の凶兆として見られるのも

 やむなしであるし、

 その出現に対して敏感となるのも、

 また致し方なきことであろう。

 


星隕せいいん(6)

 天狗てんくと異称されることもある。

 要は、隕石である。

 大概は地表に到達する前に

 爆砕するのであるが、

 その際に凄まじき轟音を響かせる。

 流星彗星が落ちてきた、と

 認識するのも、やむを得ぬ仕儀である。


蚩尤旗しゆうき(4)

 赤氣、白氣、天裂とも呼ばれる。

 オーロラである。

 要は太陽嵐、あるいは地磁気異常。

 漏れなく異常気象待ったなしであり、

 ここで紹介する現象の中では、

 唯一凶兆としてエビデンスがある、

 ……気がせぬ、でもない。



客星(9)

 厳密に紹介すれば「よく分からぬ星」。

 確率としては超新星爆発であることが

 多そうである。



五虹(1)

 詳細不明。虹が顕現する折、

 写像が様々に展開すると聞くが、

 この絡みであろうか。

(※詳細は「環天頂かんてんちょうアーク」を検索せよ)


黑氣(1)

 昼過ぎに暗かった、と言うもの。

 何せサンプル数が1なので、

 比較検討のしようが無い。



では、次話にては、

これらがどのような干渉を為したか、

また、どう解釈されたか、

そして、如何なる運用が叶うか、

について解説いたそう。

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