決闘
「今、限定結界を張ったから、これで、思う存分に戦えるようになったよ」
「限定結界って、なんだ?」
「え?そんなことも知らないの?別に自分の自慢をするわけじゃないけどさ、私まあまあ顔が知れていて、限定結界は私の
………すいません。実を言うと、貴女の名前を知ったのも最近です………
「そうなのか?それは、ごめん。知らんかったわ。っていうわけだからさ、その限定結界について少し教えてくれないか?」
「別にいいですよ。ですが、聞いたところで、どうこうなるわけじゃないけどね」
「そんなこと気にしてないさ」
「そう?ふーん、なんか面白くないなー。まあ、いっか。限定結界。それは、読んで字の如く限定されて張られる結界のこと」
「それだけ?」
「こんだけだよ」
「はは、それは、本当になんの役にもたたんかのもな」
「そうでしょう。…………ってことだからさ、そろそろ始めない?………なんか周りに人だかり出来てきてるし」
「結界の外から、結界の中を見ることができるのか?」
「うん。だって、限定結界とは、よく闘技場で使われるやつだからさ、結界の外から、結界の中見れなかったら意味ないでしょ?だから、見れるわけ」
「へえー、じゃあ、さっきの
「いや、嘘ではないよ。だけど、今の私の
「そう。…………少し質問変わるけどいいか?」
「ええ、勿論」
「ありがとうさん。もしかしてだけど、メディアって、自分が戦っているところを誰かに見られるの嫌いなのか?」
「………えーと、まあ。そうだね………だって、恥ずかしくないかい、自分の汗が飛び散るところや、自分が傷つくところを見られるかもしれないんだよ。ボクは、そういうことを恥ずがってしまうからね」
もう、私には、この人が、どんな人なのか、分かりません。始めは、とても偉大な人で、私のイメージでは、それは、もう唯唯強いってだけど、思っていたのだけど、でも、今の姿を見ていると、本当にこの人がどんな人なのかが分からなくなる。
………それに、ボクって、言った?
「意外だな、メディアみたいな偉大な人物が恥ずかしがり屋さんだったなんて、それに、メディア、一人称が本当はボクだったなんだな」
「え?どうして、知っているの?」
「ん?どうしてもなにもさっき自分でボクって言っていただろう?」
「ふ、不覚…………ボクとした事が……」
「どうして、ボクって言うんだ?って聞きたいところではあるけど、それは、君は、自分の過去を話さなくてはいけなくなるし、話したくないだろうし、それに、人の過去を詮索することはあまりよくないことだろうから、しないけどさ。………それに、そんなことしていたら、戦う時間なくなるしさ」
「ありがと。………じゃあ、始めよう!!」
そして、戦いの火蓋は落とされた。
◇◆◇◆
「天地を揺るかせ、【ローリン】!!」
そう彼女が、言うと、彼の立っていたところが、激しく揺れそして、地面が浮き上がり、爆発した。
その攻撃をなんとか、避けた彼ではあったが
「っくそ!!先手を取られたか!!」
と、先に攻撃されたことに悔しさを表れにしていた。
「なかなか、やるじゃないか。普通の人なら今の攻撃で、終わりなのにさ」
「はは、そうか。じゃあ、俺は、少なからず普通の人ではないってわけだな」
「まあね。少しはね。だから、君は次のボクの攻撃で終わりだ」
「灼熱の熱で焼き尽くせ【ファイア】!!」
彼女がそう言うと今度は、彼の周りには、炎があり、そして、彼は炎に囲まれている形になっていた。
「これで、君は終わりさ。そのファイアは普通のとは違う。ボクの力によって少し改良したもの。そして、改良したところが、持続時間の延長、そして、対象を囲むことさ。つまるところそれは、君に当てられた檻ってわけさ。……あ、そうだ。逃げ出そうなんて考えちゃだめ駄目だよ。そんなことしたら、君死んじゃうからね」
私は、少し、いやだいぶこの人のことが、怖くなってきた。
………なんで、そこまで、彼のことを早くこの戦いから切り離そうとするのだろか。
「へえー、そう」
彼は、特に驚く様子もなく、平然としていた。
………なんだろう。なにか、考えでもあるのかな?
「よし!これで、邪魔者は消えた。さあ、始めようではないか、ボクとの楽しい戦い《ゲーム》を!!」
◇◆◇◆
私は、唯感嘆するしかなかった。
………すごい、あれを避けれるなんて。正直私は、避けれる気がしない。
「なに、あの人、凄いよ!!お母さん!!」
そんなふうに無邪気に騒いでいる少年もいた。
「そ、そうだね。凄いね」
お母さんの受け答えは、とても、中身の入っていない感じだった。
………まあ、でも分かる気がするのです。だって、凄いですから……
今さっき彼が、避けた魔法は、中級魔法だった。しかも、それも上級魔法に程近い中級魔法だった。
「あの人って、そんなに凄かったんだ………」
◆◇◆◇
「じゃあ、まず始めにボクに向かって魔法を射って貰おうか」
と彼女は、私にそう言ってきたが、私はどうすればいいのかが分からない。
だって、全然魔法知らないし…………
「あれ?なにも、してこないの?」
「えーと、そのー、もの凄く」
「ちょっと、まった。ユリエ。俺に提案がある」
「なんですか?」
「今から、俺が言う魔術を復唱してくれ」
「わかりました」
「よし!!じゃあ、言うぞ。天命を天夢を復活させよ【
「天命を天夢を復活させよ【
そういうと、彼の周りの纏っていた炎が消えた。
私は、なにがどうなっているのかが分からなかった。
でも、彼女は、そんなことないようで
「ど、どうして………どうして、その魔術を知っているの?」
「ん?ああ、まあ、いろいろとあってな。ってことで、次は俺が先手を頂くぜ!!」
その時だった。パリンという音が聞こえた。
「はあ?」
「あーあ、時間切れみたいだね。また、今度再戦しよう」
「はあ?なんで?」
「だって、結界が割れちゃったんだよ?」
「ああ、そうか。結界が割れたから、外の人たちに入って来られる。だからか」
「そういうこと」
「でも、可笑しくないか?だって、限定結界って、競技場とかで使われるものなのだろ?なのに、こんなに簡単に破れることなんて、あるのか?」
「どうやら、君も気づいたみたいだね」
「ああ」
私の頭には、?が浮かぶ。
………彼は、一体なにに気がついたのだろうか?
「何者かに、破壊されたってことだろ?」
「何者かに破壊された?」
「そうだ。女神様。俺は、限定結界のことはよく知らないが、だが、限定結界は、競技場などで使われている、なら、相当の強度を持っているはずなんだ。だから、なにかの間違いで壊れることなど、ありえないんだ。でも、破れた。つまり、第三者が、破ったってことなんだよ」
「なんとなくは、わかりましたが。限定結界っていうのは、いや、結界というのを、壊すこと自体は、魔力が少しあれば簡単のはずですよ?なら、誰でも壊すlことができるんじゃないのですか?」
「そうだね。普通の結界なら、魔力が少しある人なら誰でも壊すことが、できるね。でも、女神ちゃんの気づいているじゃないかな?そんな簡単に壊れる結界で、魔法を使った決闘をやると思う?」
「………………それは、やらないですね……」
でも、私には、いまいち分からないのだった。
普通の結界と、限定結界の違いが。
「でしょ。だから、壊されるのって可笑しいことなんだよね。…………はあ、なんだろ。誰かボクのことでも狙っているのかな?」
「そりゃあ、どういう意味だ?」
彼が、すかさず聞いた。
「ああ、ボクって、巷では【破壊の魔女】とか大それた名前で呼ばれているでしょ。それで、だから、ボクの首って相当高値らしいんだ」
「はあ?女神様、この世界って奴隷制度でもあるのか?」
「いや、ないはずですけど………」
私は、自分でそう答えておきながら不安になるのだった。
………もし、奴隷制度があるのだとしたら、もうこの世界は、平和でもなんでもなくなる。
私は、平和をスローガンとしてこの世界を創造したはずなのだ。
だから、奴隷などそういった中世ヨーロッパにあったような人間を人間としてみないということが起きないように、この世界を創造する上で一番気をつけたはずだ。
………でも、私が知らない内に魔王という存在ができたように、奴隷制度というのも私の知らない内に、できているのかもしれない。
そう考えると、私の背筋は一気に氷つくように冷えた。
「奴隷っていうのが、ボクには分からないけど、そういう感じのものはないよ。さっき、ボクの首が高値って言ったのは、魔王界では話」
「魔王界の話?」
「そ、魔王の話。どうやらさ、ボクも含め異名持ちとされている人たちを殺すとさ、もの凄い報酬が貰えるらしいんだ」
「報酬ですか?」
「そう、報酬。それも、凄いらしんだ。って、凄いって言ってもいまいちわからないよね。ボクもあまりよく知らないけど、ともかく報酬は凄いらしい」
「へぇー、つまり、こういうわけか。魔王の幹部たちが、その報酬に目をくらませて、我先にと思って、メディア達を狙いに来ると。………でも、たかが結界を破ったぐらいで、なんの意味も持たないじゃないか?」
「意味は、あるさ。だって、結界を破ることが出来た。それは、結界を張った者の力が少なからず分かるから。それと、自分の実力も分かるから」
「それも、そっか。ってか、なに魔王幹部って以外とチキンな奴なわけ?」
「チキンかどうかは、わからないけど、臆病者ではあるかもね」
私の袖が、誰かの引かれた気がした。
引かれた方向に目を向けて見るとクレアがいた。
「どうしたの?クレアさん?」
「特に、なにもないですけど………早く私に席を譲って欲しいものです………」
なにもなくないじゃない。っていうか、そんな羨ましいそうな顔をしながら特になにもないとか言われても説得力ないですよ。
「クレア、彼女と話したいなら、してくればいいじゃないの?」
「べ、別に、そんなんじゃありませんし!!」
クレアは、私から顔を背けました。
………ふふ、クレアは、恥ずかしがり屋さんなんだね。
だから、私は、クレアの背中を押してあげた。
「ちょっ!!」
そして、クレアは、メディアの前に、盛大に転ぶのであった。
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