未来少女と俺

烏丸 ノート

第1話 未来少女は未来の娘

「なはくーん、まーだでーすかー?」

 一人の少女の声が浴場に響いた。

「まだも何も、なんでお前と風呂に入んなきゃなんねぇんだよ!」

「いーじゃないですかなんですからー」

「そーゆー問題じゃなくてだなぁ!」

「じゃあどーゆーもんだいですかー?」

「……」

「ねーえー」

「……」

「こたえてくださいよーお」

「あー!うるさいうるさいうるさいうるさーい!あのなぁいきなり部屋に現れた女に「は~い、私未来の娘で~す♪一緒にお風呂入ろ♡」とか言われたら怖いだろ!?そもそも誰かもわからぬ赤の他人を普通に風呂に入る許可をだした母さんが一番怖ーよー!」

 俺は風呂場の前で浴室にいる女に叫び部屋へと走っていった。

 そして胸の中でこう思う。

 なぜ、どのような過程をもちてこんなことになったんだ……と!

 そう、それは遡ること約三十分前の事である。


 〇


 暑い夏も過ぎた、秋の少し肌寒い時期。俺は学校を終え、どこにも寄らず一直線に家へと帰った。

「母さんたーいまー」

「おかえりんだりんだァァァァァ!」

 唐突にリンダリンダと叫ぶ母さんをスルーし、俺は自室へと足を向けた。

 普通に階段を登り、普通に端にある自室のドアノブを持ち、普通にドアを開ける。

 するとなんてことでしょう。部屋に入った途端、目を瞑ってしまうほどの大きな光が、我が部屋に放たれているではアーリマセンカ。

 光が止み、俺は目を開ける。するとそこには、アホ毛をぴょこぴょこと動かし、じっと俺のことを見つめてくる可愛らしい女の子がいるではありませんか。

 すると少女はずいずいと俺に顔を寄せてきて、こう言った。

「あなたが赤貞あかさだ 菜葉なはくんですか?」

「え、そ、そうですけど…なんで俺の名前知って……」

「はぁぁあ!やったァ!会えたよお父さん!んー!おとーさーん!」

 お父さんと叫びながら俺へとダイブしてくるなのぞの少女。

「はぁぁぁぁあ!?なになになになに!?お父さんって誰!?俺のこと言ってんの!?」

「はい、当たり前じゃないですかぁ!自分の娘を忘れるなんて酷い父親ですねぇ!」

「俺は彼女はおろか女の子と喋ったことすらほとんどないんだぞ!せ、せ、性行為なんてしたこともないぞ!?」

「あー、そうでしたねー、ここでしたね……大変申し訳ありません、私は未来からやってきたあなたの娘、赤貞 まやらです」

「は……?」


 〇


 とまぁ、こんな感じに俺と彼女は運命?的な出会いを果たした。

 椅子に座り頭を抱える俺はもはや笑うことしかできなかった。

「は、ははは…ははははははははぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!????」

「なんで一緒にお風呂はいってくれないんですかぁ!昔はよく入ったじゃないですかぁ!」

「うるさい!いいから服を着ろ!濡れたまんま全裸のまんまで俺の部屋へと入ってくるなぁ!」

「んん~?えぇ~?なんですかァ?未来の娘のを見て欲情してるんですかぁ~?にひひ、とんだ変態さんですねぇ~♪」

「あのなぁ、現役高校生のせいよくなめんなよぉ~!」

 赤面する顔を隠しながら俺はまやらという少女に言う。

 すると、さっきまでのテンションは何か、何故か照れた感じにまやらは言う。

「あ、なんか、その、すいませんでした。まさかそんなに赤面するとは思はなくて…あの、なんか着るものないですか?こっちまで恥ずかしくなっちゃいました……」

「なんだお前……」

 ティーシャツを手渡し俺はもう一度椅子へと腰掛けティーシャツ一枚のまやらに事情を聞く。

「で、お前はなんだ」

「え、だからあなたの娘です」

「俺には娘はおろか彼女などいにゃせん」

「だから未来のお話です」

「じゃあそれを証明出来るものは」

「そういうと思って、ほい」

「なにこれ」

「保険証です。生年月日と名前を見てください」

「2YYY年1月1日……偽造とかじゃないの?」

 ほら、最近よくあるじゃん?パスポートとか。

 だが、これが本物だとしたらほんとにこいつは───

「あ、バレました?」

「……」

「痛ァ!?ちょ、なんで叩くんですか!」

「何でもだバカ。結局お前はなんなんだよ」

「もう、ちょっとしたフューチャージョークですよう♡」

「……」

「痛ァ!?痛い痛い痛い!何でぇ!」

 俺は叩いた。もう叩いた。それぞれはもう叩きました。

「で?なに」

「うぅ、痛い…この腕輪ですよ。この腕輪で飛んできました。お父さんに、あなたに頼まれて」

「は……?んだよそれ、意味わかんね」

 さっきまでのふざけた表情ではなく、真剣な表情で、まやらは言った──。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る