第57話・空は黄昏時
彼等の様子を見て、九埜は苦笑を浮かべた。長谷寺は他の者たちと違い、遥か昔から魔女と呼ばれる魔物達と触れ合うことが多かった、そこに魔力の大小は関係ない。彼が知っている魔女達は、誰もが同じ
「対面では初めましてだなクリミーネ、文喰いも。俺はセラフィーノ・チネッリ、アズミラの出身だ」
全身真っ黒なスーツ、長い黒髪、アーモンド型の黒眼を持つ四十代ほどに見える
「あ、僕と同じなんだね~。あらためて!お酒飲みにいこーっ」
細かい事を気にしないにも程があるが、普段通りの調子を取り戻した長谷寺の一言に、彼等はゲンナリとしつつも、彼の能天気さに乗っかってしまおうと決めた。
「そういえば長谷寺先生、カミーユさんが先生に渡した箱、何が入ってるんッスか?」
首をボキボキと鳴らしながら、夕陽を反射させて輝く金色の髪を揺らして、九埜はほんの少し振り返り、長谷寺が持っている木箱を指差した。初めて学園内で顔を合わせた時よりも、随分と柔らかな雰囲気を纏っている九埜との距離が縮まっているように感じて、長谷寺は
「長谷寺先生っ、長谷寺先生っ!」
「どしたの?吉川くん」
「えー…オススメの酒とかありますか?」
突然名前を呼ばれて、キョトンとした顔で振り返る長谷寺に、一瞬何を言えば彼の興味が宝箱の事から逸れるかと考え、
(…もしかして、この中で人間、俺と透だけなんじゃ…─)
そう、こんな組み合わせは非常に珍しい、魔物が五人、亜型が一人、人間が二人。亜型はどちらかと言うと人間に近いとも言えるが、人間が遥かに多いはずのセカイで、魔物が多数。だからといって何がどうなる訳でもないが、若干の心細さというものを吉川は感じたのだった。
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