第50話・不穏な気配
生徒たちが全員出ていったのを確認して、長谷寺はライフルバッグに銃を仕舞うと、それを結ってある髪の中に放り込んだ。そして国語辞典を片手に持ち、美術室から出ていこうとした所で携帯端末がメッセージ着信を知らせて来た。聞き慣れない音に、彼は
いつ、誰が、何のために仕掛けたのか、長谷寺には
「あ、もしもーし、コレなぁに?」
『とりあえず、手に持ってるちっちゃい機械、全部壊して』
言われると同時に、彼は拳を握り込んで、見つけた装置を全て潰した。その音を聞き取り、高山は溜息を吐いてから言葉を紡ぐ。
『いま壊した機械ね、盗聴器っていう装置で、離れた所にいても盗み聞きができるように人間が作ったやつなんだよね』
自分の存在が、人間の目から見てどう映るかなど、長谷寺にとってはどうでも良いことだった。だが、人間の多いこの
そんな事が何度かあって、長谷寺のために作られたのがあの宝箱だった。長谷寺にしか開けることは出来ないが、持ち出すことなら誰でもできる。故郷や、誰の物か判別できる魔物が多い
教師たちに混ざって美術室へ押し入ってきた人間の中に、長谷寺の力を手にしようとしている組織の者が数名、どさくさに紛れて踏み込んで来ていたのだ。彼等は、長谷寺の弱味を握ろうと盗聴器を仕掛けたはいいモノの、全く手出しが出来なさそうな人物の名前や、狂っているのか単なる馬鹿なのかと思わせる言葉しか出てこない。そんな情報ばかりの中で唯一まともだったのが、長谷寺にとって大事な人間[酒城 透]という存在だった。
だが、長谷寺も高山も、その時の質疑応答の内容は覚えていなかった。耳と鼻がいい高山は、自分が美術室に入る少し前に盗聴器を取り付ける音を拾ったし、話も聞いていた。だがバックに迅が控えているような人間を、どうにかしよう等と考える人間がいる筈はないと思っていた。端的に言葉にするなら彼等はただ、この
この日、一日を無事に終えて朝の言葉通り九埜 真日留を迎えに行くと、彼女はタバコを吸いながら、黒猫セラフィーノを肩に乗せて長谷寺を待っていた。そして、彼の後ろにゾロゾロと付いてきた面々を見た九埜は、長い溜息を吐いた。そこに居たのは、文喰いの高山、監視役の幸嶋、誘導役の教師である吉川、仲の良い黒腕、今の学園で一番名前が上がりやすいだろう人物たちだ。九埜は、まるで厄日だとでも言わんばかりに渋々と重い腰を上げる。こうして、六人と一匹は大注目されながら学園の正門をくぐって出ていった。
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