第32話・文喰い高山
全身が
「紫陽花、手がいい?口でもいい?」
「手っ!もしかしたら好きなヒトがいるかも知れないし!」
(こういう所だけは常識的だよね、ホント…十中八九、紫陽花に気があると思うけど)
「りょーかい」
普段は、どちらかというと肉ごと喰らう事のほうが多いのだが、それは夕方のように既に死んでいる状態であるからだ。生きながら長谷寺の[
長谷寺と繋がりがある人間だからこそ、一応確認したのだが、長い付き合いながら未だに、[
彼は、出来るだけ透の身体に刺激を与えないよう気をつけながら、自分の手の平の上に透の手の平を乗せた。その手が虹色に輝き始め、ゆっくりゆっくり光は高山の腕を辿ってゆき、十数分間に渡って流れ続けると少しずつ輝きが小さくなり、消えていった。透は、口を開くのもできない程の身体の
「よし、うーん、これはちょっと道具がひつようかな?」
ボソリと低い声で呟くと、サッと立ち上がった高山が脱衣所前で待っている長谷寺の元へ行き、軽そうにその身を横抱きにしたのが見えた。当の長谷寺は少し首を傾げながら彼を見つめていたが、高山はソレを無視して透に話しかけた。
「晃ちゃん?」
「嵐堂学園2D、高山 晃一でーす。ちょっと今夜は紫陽花のこと借りていきまーす」
「え」
さっさとその場を
「兄さんっ!長谷寺さんがっ!」
揺すり起こされ少し機嫌が悪そうな顔をした迅、長谷寺の名前が透の口から発されて、飛び起きる。先程起こったことを全て伝える透は、高山が自分に向かって言い置いていった言葉も兄に伝えた。唇の下を少し撫でると、迅はベッドサイドのテーブルから携帯端末を手に取り、誰かに電話をかける。時刻は深夜三時を回ろうとしているのに、兄が電話をかけている相手は出てくれるのかと、不安を感じずにはいられない透。数回のコール音が漏れ聞こえ、低く響く男の声がした。
『珍しいな、どうした』
「うちの
通常であれば、どんな話や報告にも即座に答えてくれる通話相手が数秒間、息を飲んで押し黙る。すぐに、迅は高山の存在がどれだけ想定外のモノなのかを知った。長い溜息を吐いた通話相手は、力が抜けたように囁く。
『罪創りと文喰いか…二人が一緒なら問題ない……
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