第44話 湖畔の二人
「よう、お嬢さん」
「ニュクスですか」
お屋敷の北に位置する
訓練用の服装なのだろう。ソレイユは青いタンクトップ型のトップスと白いショートパンツという肌の露出の多い軽装だ。
最初はお屋敷を訪ねたのだがソレイユは不在で、メイドのソールに居場所を尋ねてここまでやってきた。ヴェール平原とカキの村での一件の活躍を経て、多少は信用してもらえるようになったのだろう。ソールはあっさりとソレイユの居場所を教えてくれた。
この湖畔は、暗殺の夜にニュクスがソレイユに敗北した因縁深い場所でもある。
「剣術の稽古か」
「はい。私はもっと強くならなくてはいけないので」
「ストイックだな」
稽古を中断し、タルワールを鞘へとしまったソレイユへニュクスがタオルを投げ渡した。
「ありがとうございます」
露出している顔や腕、
「
「お気遣いどうも」
色気の欠片もないやり取り。異性の存在を憚らないソレイユもそうだが、魅力的なソレイユの
「腕の調子はどうですか?」
「眼鏡っ娘のおかげで、この通りだ」
汗の始末を終えて
腕はもう
「リスが
「昔から回復は早い方だからな。礼も
「それがいいですね。私もリスには何かご
「あいつが喜ぶ物といったら」
「本ですかね」
意見と一緒に笑いも重なる。
「ニュクス。お昼は食べましたか?」
「いや、まだだが」
「でしたら、ご一緒にサンドイッチでも
「二人分?」
「外出時はいつもリスが一緒なので、普段の調子で二人分作ってしまったようです」
「そういうことか。それじゃあ、遠慮なく頂くとするかね」
ソレイユが太腿の上に置いたバスケットの中から、ニュクスはレタスと卵フィリングの
「美味いな」
「後でソールにもそう言ってあげてください。きっと喜びますよ」
そう言って微笑むと、ソレイユもサンドイッチを一つ手に取り、幸せそうな顔で頬ばった。
「お嬢さん。良い機会だし一つ聞いてもいいか?」
「何でしょうか?」
「あんたのご先祖様についてだよ。平原では影の英雄とか言っていたが」
「構いませんよ。機会があったらお話しすると約束していましたからね」
口元をナプキンで拭うと、ソレイユはあえてニュクスの正面へと座り直し、向かい合う形を取った。
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