第28話 勇将二人
王都サントルの中心部。騎士団本部の屋上に二人の
「準備は万端ようだな。ウルズ」
かつては
全盛期のように最前線で剣を振るうことは叶わぬが、鋭い眼光と気迫には一切の衰えを感じさせない。
「出陣まで残り3日だからな。目的は監視とはいえ、両国の関係に大きな影響を与えるやもしれん場に
刈りあげた金髪と立派な口髭が印象的な長身の男性は、
勇猛かつ理知的。時には奇策を用いて
同じ時代を生きてきた盟友同士。
片や一線を退き参謀役に回り、片や現役の戦士として今も戦場の最前線へと立つ。
互いに歳を取り立場も変わったが、
「帝国とて早まった真似はしないだろうが、もしもの場合は頼んだぞ」
「無論だ」
少ない言葉で交わされる、勇将同士の護国の誓い。
互いに表情を軟化させた2人の男は、年齢相応に家族の話題を口にする。
「フォルス。お前の娘、何歳になった?」
「17歳だ。私が不在の間、よく領内をまとめあげてくれている」
「17か。
「すにで来ているよ。娘にはまだ知らせていないが、こちらへ来てから何件か見合いの申し込みがあってな。状況が落ち着いてからということで、話は私の所で止めてあるがね」
「魔物の
「危機感というのは常に現場が一番感じているものだ。温室しか知らぬ者達には、それが分からんのだよ」
「剣聖と
「皮肉を言ってくれるな。一線を退いた今、私はもう娘の将来を思うだけの一人の父親だよ」
「父か。して娘の縁談、どうするつもりだ?」
「一応話は持ち帰るが、娘の意志を尊重するつもりだ。あれのことだから全て断るだろうがな」
「ほう?」
「あれは
「親馬鹿め。本当は可愛い娘を手放したくないだけだろう」
「言ってくれるな。娘が心から愛した男を紹介してきたなら、身分に関係なく快く送り出してやる所存だ」
親友の父親らしい一面を垣間見たウルズは
「お前ら親子の未来のためにも、今回の任務、十二分に果たさねばならんな」
「期待しているぞ、親友」
「任せておけ、親友」
互いの拳を合わせ、童心に帰ったかのように二人の男は豪快に笑った。
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