第4話 素敵な感情

 帰路に着き部屋に入ると、部屋に夕飯の臭いが立ち込めている。

 急いで帰ってきたこともあって、食欲も増長するものだ。


 「ただいま」


 「おかえりー、遅かったね」


 エプロン姿がとてもぷりちーな深雪たんが迎えてくれた。

 髪を後ろに束ねてチョコンと起立したポニーテール姿も堪りません。特にうなじがいけない、公園で溢れんばかりの想いを叫び、たかが外れてしまった俺には凶器そのものだ。


 今までコントロールしていた感情が馬鹿みたいになっている。

 正直に言おう、今この瞬間、俺は深雪を後ろから抱きしめたい。スンスンしたいしハスハスしたい。うっひゃあ、堪えられませんね。


 ああ、なんて変態だろうか! なんと罵られようと、それが俺の正真正銘の本音であり真実なんだ。愛さえあれば良い、ラブ&ピース!

 頭がアルコールにやられたみたいに酩酊している。いや、摂取したことないけどね。

 やはり六道の言った通り、俺は男の娘しか愛せないのかもしれない。


 「もうすぐ出来るからね、先にお風呂入っちゃえば?」


 「おふおふおふお風呂ですか!? それは先にシャワー浴びて来いよってことですか!?」


 いくらなんでもそれは早いよ! まだ心はときめきメモリアルの乙女ちゃんなのだから、そこまでの準備は出来ていない。


 「どうしたの彼方? 汗がすごいよ?」


 「走って帰ってきたからね、別に冷や汗とかじゃないからね、勘違いしないでよね!」


 「あ、うん。シャワーで頭冷やしてきたら?」


 深雪は水より冷たい言葉を浴びせてくる、俺のほうは気が気でないのです。

 男のお風呂シーンで申し訳ないが、言われた通り俺は浴室に入る。


 さて、これからの方針としては深雪を男の娘にすることなのだが、いい方法なんて思いつかない。

 そういえば女装キャンディーなる荒業もあるのだが、深雪は女装の衝動を抑え込むほどのタフメンタルの持ち主である。だいたい、そんなものに頼るのはナンセンスだ。


 とまれ、深雪を女装させるのは至難の業だろう。

 だが、ここで逃げるのは今までの生活の延長線上でしかない。

 虎穴に入らずんば虎子を得ず。

 俺はとある策を立て風呂をあがる。


 浴室を出ると食事の用意がされていた。なんたる良妻だろう、まさしく理想の俺の嫁と言っても差し支えないね。

 どうやら今日の献立はパン、ビーフシチュー、サラダとなっている。


 「あ、お風呂あがったんだ、タイミングばっちしだね」


 「今日も美味しそうだな」


 「いつもそんなこと言わないのに、煽てても何も出ないよ」


 俺はしずしずと食卓に腰を下ろす。

 深雪も向かいに座り、同時に頂きますと挨拶をする。


 「なあ、今週の休日空いてるか?」


 「うん、何かあるの?」


 俺はお風呂で思いついた作戦を提案してみる。


 「俺ともう一回デートしないか?」


 深雪は目を丸くして呆然としている。やっぱりそんな顔も愛らしい。

 俺があの時感じたキュンキュンした感情を今度は深雪にお返しするんだ。

 そして、俺は深雪にこの気持ちを告白をする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る