第6話
「どうしました?」
澄んだ声に、女はハッと我に返る。
増していく頭の痛みに顔を歪めながら、呟く。
「早く行かなきゃ。彼が待ってる」
少年は徐に、左手を女の前に差し出した。
その手のひらには綺麗にラッピングされた、小さなギフト
ボックスが乗っている。
「これ、彼からのプレゼントです」
女は目を見開き、その箱をじっと見つめた後、少年へと視線を移した。
僅かに幼さを残しつつも、端正過ぎる顔立ちはまるで人形のように
無機質に見える。
「あの人はどうしたの?一緒じゃないの?」
少年は大きな瞳を瞬かせ
「…彼は来られません。だから代わりに僕が…」
「来られないって?どうして?」
女は急激に襲ってくる吐き気に口元を押さえた。
「ここは生者の立ち入れない場所だから」
「―――――ショウジャ?」
聞き慣れない言葉に首を傾げる。
少年が小さく頷いた。
「僕たちがいるのは、生と死の狭間に位置する空間です」
「はぁ?
…アンタ、私を馬鹿にしてるの?」
全身を切り裂くような激痛に脂汗が滲んだ。
「ねぇ、ここは何処なの?何でこんなに真っ暗なのよ」
右を見ても左を見ても、ねっとりと絡みつくような闇が広がっているばかり。
こんな場所で見知らぬ少年の冗談に付き合っている暇などない。
それにしても―――
女は荒い息を吐いた。
この痛みは何なんだろう?立っているのもやっとだ…
少年が女の顔を覗き込む。
漆黒の髪がさらりと揺れた。
「落ち着いて、思い出してください。貴女がここに来る前の事を…」
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