第59話 悪魔と戦場
孤軍奮闘。俺は今まさにその状態だった。
黒い鎧の男が攻めてくる。波のように。立て続けに俺を襲う刃。そんな鎧はすぐに倒される。しかし、無限に襲い繰る。
終わりなき戦い。無限に続くような気さえする。必殺のメテオはもうすでに使ってしまったから、今の残りMPはわずか。MPポーションも持ってきていない。ああ、辛い!
しかし、ここで防衛線を張るって決めたのは俺なんだ。後ろを任されたのだから。
俺は剣を構えた。
「オラァ! どんどんかかって来いやぁぁ!! 俺が相手になってやるぜぇぇぇぇぇ!!!」
**********
一方、アリスたち。
「はあ、ジュンヤくん大丈夫かなぁ」
「お姉ちゃん、なに心配してるんだ? あの人間ならおそらくやるぞ?」
「そうよ。あれでも一度は町を救ったんだからね。きっとやってくれるわ」
「そうだよね。ありがと。リリス、ファイさん」
彼らは悪魔の元へと向かっていた。何の恨みがあってこの幼女をさらおうとしているのかはわからないが、とにかくみんなが愛するこの町をめちゃくちゃにしたことには変わりない。しかもこんな大軍で。そんなやつを町の冒険者たちが許すはずがなかった。
ここにいるのは、カイ、ファイ、アリス、チェシャ、ラビ、ユウの6人。そして、リリス。町を代表する勇者たちだ。そのほかの冒険者も町を守るために各所で戦っている。
彼らは希望を託されて、今、ここにいるのだ。
仲間が必死の思いで開けているこの道を急いで走っていた。
「後ろのことを気にしていても何も変わらないよ。僕たちは、仲間たちを信じて前に進むんだ」
彼らは走る。前へ。
**********
たどり着いた先には、悪魔。目に見えるほど大きな闇のオーラが立ち上っている。
「おお、ついにやってきましたか、リリス様。さあ、私と一緒に参りましょう」
「いつもいつも懲りないやつだ。答えはNOだと何度言えばわかる」
「あなたが行かなければ町がどうなるか……わかりますよね?私もそういう行為は心が痛むのですよ」
「痛む心すらないのによく言うな。大方、情勢悪化でどうにもならなくなったから連れ戻しに来たんだろ。自分たちで追い出したのに都合のいいことだ」
リリスと悪魔が口げんかをしている。険悪な雰囲気だ。しかも、二人は昔知り合いだったような感じ。口を出しづらかった。
「では交渉決裂ですね。無理やりにでもあなたを連れ戻しますよ」
「やれるものならやって見ろ。絶対無理だろうがな」
何がなんだか知らないが、交渉は決裂したらしい。
「ご安心ください。あなたのご友人は皆殺しにして、もう帰って来ることもできないようにするつもりですから」
「おい、今なんていった。あたしの友達を全員殺すだと? お姉ちゃんも、カイやファイ、ユウやワンダーランドのみんなもか……? そんなこと、絶対させねーよ!!」
「……お姉ちゃん?あなたには姉などいないはずなのに。あなたの家族は、あの方だけですよね」
「サタンのこと?あいつとならもう離婚してるから。アダムももう何千年も前に死んだし。夫はもういないよ。今はアリスの妹だ」
「……そうですか。ならば、その姉とやらを一番先に殺しましょう」
「え!?」
「やめろ!」
悪魔が放った光の弾。それは、まっすぐアリスに向かって飛んで行き……消える。リリスが同じような光のビームを放っていた。ぶつかって対消滅のような現象が起こったのだろう。+と-を足してちょうど0になったという感じである。アリスはあっけにとられた顔をしている。
「よくもあたしの大切な人を傷つけようとしたな。もういい。貴様とは一度決着をつけたいと思っていたところなんだ。消え去れ」
そして、戦闘が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます