第39話 緊急戦闘

 ウルヴェンから見て斜め後ろ、足の付け根の辺りに、ラビが技を放った。

 槍が光り、

「槍技、豪雷突!!」

 強力な突き技が魔獣ウルヴェンを襲う。

 突然の出来事に驚き、振り返ろうとするウルヴェン。しかし、動くことはできなかった。

 実は、純也がラビの槍に火花魔法を付与しておいたのだ。

 予想通り、スタン状態になり動かなくなった魔獣。

 そして、俺は指示――宣言をした。


「みんな、総攻撃だ!!」


 その瞬間、一気に魔法が炸裂、色とりどりの光が魔獣を包み込む。そして、俺たちも攻撃。

 魔法、剣技、槍技、そして、魔獣の血。さまざまな色が散乱する。そして、魔獣の命は確実に減っていった。

 一方的な攻撃は1分間も続いた。

 そして、動き出した魔獣は、ふらついていて、弱っているのがよくわかった。HPバーがあるならば、もう赤くなっているところだろう。

 しかし、計算違いというものは誰にでもある話である。


 魔獣はなぜか俺に向かってきたのである。


 牙をむき、こちらに走る巨大なドーベルマン。誰にだってわかるほどのどす黒い殺気を迸らせて向かってくる。

 それは、本能からの恐怖を呼び起こすのには十分だった。

 とっさに二刀をバツの字に重ね合わせて防御態勢をとるが、

「この威力だと受け止めきれない……!」

 元の攻撃力が高い上に、スピードが出ていて、このまま突撃されるとこの状態でも危険だ。

(もう死ぬ……!)

 死を覚悟した。魔獣は肉薄していた。魔獣は速度を緩めずに突っ込んだ。その瞬間だった。


「リフレクション・シールド!!」


 アリスの声が響き渡り、俺の前に青い透明な薄めの壁が現れた。

 魔獣はそれにぶつかる。

 しかし、その壁は慣性の法則でたわんでしまった。

 まるでトランポリンのように……トランポリン? ……そういうことか!

 壁は、大きくしなり、やがて動きを止めると、魔獣の体を丸ごと跳ね返した。

 反射防御壁リフレクション・シールド…………その鉄壁の防御でもって攻撃を防ぎつつ、その極限の弾性でもって、攻撃を数倍の力で反射する魔法。

 それに最大限の力で打ち込んできた魔獣は、その何倍もの力で打ち返され、飛んでいき、近くの木にぶつかり、そのまま体中から血を噴き出した。

 絶命したのか……?

 いや、それでもぴくぴくと動いている。

 しぶといやつだ……!

 でも……これならいける!

 俺は短剣を取り出し、

付与エンチャント火発生ファイア……いけ!」

 投げた。

 弱点突きスキルが発動すればいいが……当たった!

 投げた剣は魔獣の喉元に当たり、そのまま燃えた。その炎は、魔獣のわずかに残っていた命を焼き尽くした。

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